自然食の人たちにいわせたら、脂肪どころか、タンパク質までもが、植物性にかぎることになっています。
その根拠はないですが、あまり説得力はありません。
脂肪という名の物質は、グリセリン一分子に、三個の脂肪酸が結合したものです。これは中性ですから、「中性脂肪」とよばれます。
動物性にせよ植物性にせよ、脂肪つまり中性脂肪は、この形の化学物質です。動物性脂肪と植物性脂肪との違いは、脂肪酸の違いに過ぎません。
脂肪酸には、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸とがあります。
これは、水素が飽和しているかいないかの違いですが、不飽和脂肪酸は植物性脂肪に多く、動物性脂肪に少ない。
不飽和脂肪酸のなかまのリノール酸やリノレン酸は必須脂肪酸ですが、これが多く含まれるがために、植物油は動物油より優れているといわれます。
近来、動物性不飽和脂肪酸のアラキドン酸、エイコサペンタエン酸が必須脂肪酸として脚光を浴びることになり、魚油が見直されてきました。
植物油を動物油の上位に置く根拠は薄れつつあります。
不飽和脂肪酸は、自動酸化しやすく、老化の原因「遊離基」をつくります。
飽和脂肪酸を与えられたネズミの寿命は、不飽和脂肪酸を与えられたものの二倍だといいます。
必須脂肪酸以外の不飽和脂肪酸は寿命の敵だとすると、植物油、植物油と騒ぐのはますますおかしなことになります。