あなたが知らないところで行われてきたビタミンへの不信感を煽るための心理作戦の数々

「紳士淑女の皆さまがた、《製薬業界のための政治家・教育者・ジャーナリスト連合世界本部》の年次総会にようこそおいでくださいました。

さっそく本題に入ります。

我らが会員および同志の諸君は、保険医薬分野の一部勢力が我々にとって脅威であり、危険な存在であると、これまで常々、愚痴をこぼして参りました。

そうです、いわゆるオーソモレキュラー医学というヤツです。

残念ながらヤツらの治療アプローチは疾患の予防と治療に非常に効きます。

しかし皆さん、安心してください。我々は、一般大衆にこの治療法が知られないようにするため万全を尽くすことを皆さまにお約束したいと思います。

我々が相当の自信をもってこのように言うことができるのは、過去50年以上にわたる我々の実績があるからです。

我々は統合失調症治療に際して、実質的には全ての精神科医がナイアシンを使うことがないよう、何とか抑え込んできました。

心臓病に対して心臓専門医がビタミンEを処方するのもやめさせましたし、ウイルス性疾患に対して総合診療医がビタミンCを処方などしないよう、対策を講じてきたのです。

そうです、この50年は、実に、我々にとって勝利の半世紀だったのです。我々はどうやって、それを成し遂げたのか?

極めて簡単なことです。

我々の行動原理は、一般大衆に恐怖心を植え付けることです。

恐怖ならどんなものでも構いませんが、我々にとって喜ばしい"恐怖"であり、それゆえ一般大衆に大いに植えつけたい"恐怖"は

「新種のウイルスに対する恐怖」

「ワクチンの不足に対する恐怖」

そして何より、

「ビタミンの毒性に対する恐怖」であります。

「ビタミンの毒性」なるものを大衆の心理に刷り込んだときの我々の大成功は、劇的の一語に尽きるものでした。

もちろん毒物管理センターの数十年分の統計を見れば、ビタミンによる死亡は実質存在しないことが分かりますし、皆さんもご存知かもしれませんが、薬の場合は適切に処方されたものを指示通りに服用したとしても毎年少なくとも10万人のアメリカ人の命を奪っています。

我々にとって最も不都合なのは、ビタミン療法は薬物療法よりも数万倍も安全性が高いということを、一般大衆が知ってしまうことです。

そこで我々は次のような作戦を展開しております。

まずもって栄養療法には常に100%の安全性を求めよ。

一般大衆に対して、

「薬物療法には危険な、時には致命的な副作用もあるけれども、これは仕方がないことであって受け入れざるを得ないのである」

とか、

「もし一つの薬が効かなければ、効く可能性のあるもっと高価な別の薬があるものだ」

という考えを擦り込まなきゃならない機会を、皆さまがたもしばしばお持ちのことと思いますが、そんな時にはこの作戦を繰り出すと特に効験あらたかなのであります。

そして「ビタミンは効かない」あるいは「明らかに有害である」と断言できるような"研究成果"を出版・流布することに専念せよ。

ビタミンの使用量が少ない研究ばかりを選び、高用量使った研究は無視せよ。

低用量のビタミン投与の結果を調べた研究に対しては

「効果がないと非難を浴びせ、有効性のある高用量ビタミン投与の研究に対しては、危険性を指摘して信頼性を落とす。

これこそが我々の見事な打撃策です。

ビタミンの有効性を否定する研究を一つあげつらって、それ以外の数百の肯定的な研究は無視する。このやり口も覚えておきましょう。

ビタミン大量投与を有効だとする肯定的研究が実際に皆さんの部署や学会、あるいは学術専門誌に提出されたらどうするか。

そういう場合は重箱の隅をつつく戦法で難癖をつけて却下する。

しかもそれを、一年とか二年とかたっぷり時間をかけて焦らしながらすればよい。

もっといいのは、そういう論文の著者に「『オーソモレキュラー医学誌』に掲載してもらったらどうですか」と勧めることです。

そこに掲載されたものは何であれ、もはやアメリカ国立医学図書館に索引収載されることはありません。

つまり、一般の人たちが《メドライン》で年に7億件の検索をかけようが、そうした研究が彼らの目に触れることはない、という寸法です。

人目につかない研究など、存在しないも同然ですからね。

状況を分かりにくくする、という手も有力です。何が問題なのかを不明瞭にし、混乱させましょう。

大衆への情報提供の際にはやっかいな真実が含まれていてはいけません。我々はこうしたことをタバコ産業から学びました。

理屈で説得できないときには、デタラメを並べてでも、とにかく攪乱させるのです。

ビタミンについては否定的な面にスポットを当て、肯定的なところは無視することをお忘れなく。

すぐれた議論が、事実によって邪魔されるなんてことは断じてあってはならないことです。(ついでに申し上げておきますが、勝れた議論ってのは、もちろん皆様が勝ちを占めることができる議論ってことです。)

これは「健康」云々という話ではなく、攻略駆け引きの問題なのであります。

アメリカ国民のじつに半数がビタミンのサプリを摂っているのですが、オーソモレキュラー医学を実践する医師は1パーセントもいません。

つまり、そういう医師はほんの少数派なわけですから、ヤツらを黙らせるなんて、難しいはずは無いじゃありませんか。

早い話が、ライナス・ポーリングの身に何が起きたか御覧になればいい。

彼がビタミンCの有効性を世間に説いたとき、我々は医学界がすべて公然と彼を嘲笑するように仕向けたのですから。

二度ノーベル賞をとった歴史上稀に見る人でさえ、あの通りだ。

教育というのは小さなステップの無数の積み重ねであって、そこに付け入る秘訣は、機会のあるごとにこつこつ干渉し続けることです。

ニュースメディアや医療出版に事実が現れるたびに我々はそれをぼかして曖昧にする。

こうして洗脳に向けた努力を少しずつ積み重ねることで一般大衆の思考を無邪気なままに保ち、栄養医学など即座に踏み潰して、彼らに永遠に栄養医学なんぞが吹き込まれないようにするのです。

さあ、皆さまもご自身のパソコンに向かって、仕事にとりかかってください。皆様の力強い"作品"を、マスコミ報道機関は首を長くして待っておりますよ。」


《製薬業界のための政治家・教育者・ジャーナリスト連合世界本部》などという明らさまな"陰謀団体"をここに登場させたのは(いささか)作り話めいているけれども、この"演説"で語られている問題は、現実に起きてきたことである。

ビタミンへの不信や恐怖を煽るような話は実際にニュースのトップ記事になるが、ビタミンで治ったという話は夕方のニュースにさえ登場することはまず無い。

友人や医師、マスコミから、栄養大量投与療法についてのデマや迷信、明らかな嘘を人々はたくさん耳にしている。

一般大衆は自分たちにとって最も助けとなるまさにそのもの(栄養サプリメント)に対して、近づいてはいけないと警告されているわけだから、実に奇妙な事態なのである。

1960年当時に大人気だったテレビドラマ『ビーバーちゃん』のなかで、まだ小学校低学年の主人公ビーバー少年に、やさしい父親がこんな人生訓を垂れたものだった__

「たいていの人は、本当は自分の役に立つことなのに、『そうじゃない」って突っぱねて、『やっぱり役に立たなかった』っていう証拠を見つけるために人生を無駄にすごしてしまうものなんだ。」

ケチをつける報道の方が新聞はよく売れるし、インターネットでもアクセスが増えるものである(「血が流れれば、トップニュースになる」とは、経験豊富な編集者の格言である)。

製薬会社は政府に対して政策誘導工作(ロビーイング)を行っており、また、マスコミに対しては合成新薬を「魔法の薬」だと信じ込ませるような好ましいイメージを一般大衆に向けて流布させるために資金を注入している。

そんな彼らの活動は見事に成功しているのである。

彼らの製品(適切に処方され、指示通りに服用したとしても)によって毎年10万6000人の患者が死んでいるにもかかわらず、である。

[Orthomolecular Medicine for Everyone: Megavitamin Therapeutics for Families and Physicians]より