ウイルス感染症と細菌感染症

ウィリアム・J・マコーミック医学博士は多くの感染性疾患の原因はビタミンC欠乏であり、ビタミンCこそが効果的な治療法であると提唱した。

1947年、彼は1840年以降の死亡表を引用して「結核、ジフテリア、猩紅熱、百日咳、リウマチ熱、腸チフスは主にビタミンC不足によるものである」と述べた。歴史上の病気の流行はビタミンC摂取不足の歴史的変動として理解できるという指摘は、60年前と同様、今日の目から見てもなお斬新な考え方である。

マコーミック医師はビタミンCこそ治療の中心的栄養素と考えて、「還元剤として、時には酸化剤としても、化学反応を行なうことで、ビタミンCは化学的な毒や細菌性の毒に対する特異的な拮抗剤としても作用している」と述べた。

さらに彼は「ビタミンCは組織内呼吸の酸化・還元反応において重要な役割があり、また、感染症に対する自然免疫ができる際に抗体を作ったり毒を中和したりする役割もある。一時間ごとに500~1000mgを、できれば静脈注射か筋肉注射で繰り返し大量に投与すると、アスコルビン酸の治療作用は非常に強力だろう」と述べた。

ビタミンCの大量・頻回投与によっていわゆる感染症が治癒することについては、かなりのエビデンスがある。感染症とされているこれらの疾患が実はビタミンC欠乏病であるということが確立されれば、我々はこれらの病気をビタミンCの定期的かつ大量の投与により予防することができるはずである。

これはまさに可能なことであり、マコーミックはこう言っている。「アスコルビン酸の大量投与によって感染性疾患の急性発熱あるいは毒性の現れる段階がいったん抑制されたなら、再発予防には比較的少量のビタミンC維持量で十分である、というのがたいていの症例である。これはちょうど、防火に関して、初期の火災予防には小さな消火器で十分だが、大火事になってしまうと消防車の大きな高圧ホースが必要になるのと同じである」。

マコーミック医師は、抗ウイルス薬・抗菌薬としてビタミンCを使うことを早くから提唱していた。1950年代には1000mgを繰り返し投与するという彼にとっては比較的少なめの治療法でさえ、天文学的に多い投与量であり恐るべきことだと受け取られた。今日でさえそういうふうに感じる人もいる。

しかし高用量のビタミンC投与はウイルス感染症に対して極めて安全かつ効果的な治療法である。ビタミンCは高用量で用いるとフリーラジカルを中和し、ウイルスの殺傷効果を高め、体の免疫系を強化する。定期的にビタミンCサプリを摂ることで、ウイルス感染症予防の一助となる。

クレナー医師はウイルス感染症の治療にアスコルビン酸をさらに大量に用いることで、さらなる成功を収めた。彼はワクチンが開発される数年前に、すでにポリオに対して劇的な結果を得ていた。アスコルビン酸を結晶の形で使えるようになって数年後には、研究者らは、ポリオに感染させた猿においてビタミンCは重症度を軽減し、ポリオに対する抵抗力を高めるという結論を得た。

しかし感染させるのにウイルス量をもっと多く使い、治療するのにアスコルビン酸をもっと少なく使った他の研究者らは、予防効果を観察しなかった。クレナー医師およびその他の研究者が肯定的な治療結果を得たのは、ビタミンCを非常に大量に用いたからである。

ポリオは現在ではその発生が抑えられているが、これらの初期の実験はアスコルビン酸の有効性と安全性を証明するものである。ポリオのワクチンを受ける前には(あるいはその他のワクチンについても言えることだが)、たとえ頻度は少ないにしても副作用の可能性を避けるために、全員が大量のアスコルビン酸を摂るべきだ。

ウイルス性肝炎も高用量のアスコルビン酸に反応する。ビタミンCの専門家であるロバート・F・カスカート医師は、ウイルス性肝炎はアスコルビン酸で治せる最も簡単な病気だと述べている。

その用量は経口で一日40gから100g(4万mgから10万mg)と幅があるが、緩下作用が低用量で生じてしまうようなら、静脈注射で投与する。急性の症例では三日以内に便や尿が正常化し、四日目には患者は体調の良さを自覚し、六日目には黄疸がなくなる。慢性の症例では好転にもっと時間がかかる。

ヘルペスもアスコルビン酸で治療できる。ヘルペスには単純ヘルペス(単純疱疹、口唇ヘルペスとも言う)、帯状疱疹、性器ヘルペスの三つのタイプがある。

アスコルビン酸は十分量投与されるとヘルペスウイルスを不活化させる。研究者は一日1000~2000mgのアスコルビン酸を使い始めた患者38人を追跡した。患者はこの数年間に三〜五回のヘルペスの突発を経験していたが、アスコルビン酸を飲むと、30人がその後ヘルペスの再発がなかった。その他の患者もヘルペスの症状の再発は起きたものの、その回数・重症度とも軽減した。8人中6人がアスコルビン酸の一日量を3000mgあるいは4000mgに増やし、調子がはるかに良くなったと述べた。亜鉛を摂ると、アスコルビン酸と協調することで、効能が高まる。

高用量のビタミンCは帯状疱疹に対しても有効である。

アスコルビン酸を局所に外用すると、一般には治療法がないとされている性器ヘルペスに有効だとの報告がある。
アスコルビン酸が一番効くが、傷口には少し染みるかもしれないため、アスコルビン酸カルシウムならば非酸性で痛みがないだろう。不快感、局所のサイズとも、一晩で大幅に軽減したと人々は報告した。

もし病変部に水疱が多くあるなら(その液体には無数のウイルスが含まれている)、ビタミンC塗布によって病変部が乾燥することに気付くだろう。
水疱が破れて液体が漏れたら、塗るのは局部だけではなく、ある程度その周辺にも塗っておくのがいいだろう。ビタミンCのペーストが乾くと、残ったビタミンCの結晶が白い霜のようにかすかに残る。皮膚が治るまでこのように一日二回塗るのを繰り返すとよい。

カスカート医師によると「ビタミンCペーストの局所塗布は単純ヘルペスの治療に非常に有効であり、また、有効性としてはそれより若干落ちるが、カポジ水痘様発疹症の治療にも効果がある」。HPV(ヒト乳頭腫ウイルス)もビタミンCペーストの局所療法で治療できるようである。

新聞、雑誌、その他様々なメディアでしばしば話題になる鳥インフルエンザは、インフルエンザの特に重症なものである。150人程度のヒトへの感染のほとんど全てが家畜の豚由来なのだから、鳥インフルエンザというよりは恐らく豚インフルエンザと呼ばれるべきだろう。

興味深いことに、鳥インフルエンザの症状として、皮下出血、鼻や歯茎からの出血というのがある。これは臨床的な壊血病の古典的症状でもあるわけで、重度のビタミンC欠乏があることを意味している。これはまた、ビタミンCがその治療に必要だということでもある。重度の症例では20万~30万mg(200~300g)、あるいはそれ以上のビタミンCが必要であり、医師に静脈注射で投与されることになるかもしれない。

これほどの高用量が必要なのは、鳥インフルエンザはエボラ感染症のような急性ウイルス性出血熱に似ており、ビタミンCを急激に消費しているからだと思われる。カスカート医師は、たいていのインフルエンザには一日10万から15万mg(100~150g)、鳥インフルエンザには一日15万から30万mg(150~300g)といった具合に、ビタミンCの高用量治療について詳細に述べている。

ビタミンC療法によって適切な量を適切な頻度で投与することが治療成功に絶対必要である。
だからここで、改めて申し上げておきたい。

「ベストな結果を得るためには、起きている時間帯にビタミンCを分割投与するが、便がゆるくなる(下痢が起こらない程度)まで増量すること。便がゆるくなればビタミンCの用量を減らす。ウイルス性感染症の症状が再び現れたら、それは用量を増やすサインである」。

すっかり回復するまで使い続けることで、ビタミンCがウイルス性疾患の重症度、持続期間をどれほど大幅に軽減するか、自分の目で確かめることができる。

アスコルビン酸は、以下の理由で細菌性感染症にも有効なはずである。

(1)制菌的(細菌の生長を抑制)に作用する
(2)細菌毒素を解毒する。
(3)貪食作用(体内に遊走しているマクロファージのような「食細胞」が、異物をむさぼり食べて消化分解してしまう作用)を調整・維持する。
(4)無害であるため、高用量での投与が可能である。

アスコルビン酸は結核、肺炎、百日咳、腸チフス、赤痢、その他感染症の治療に用いられてきた。初期の多くの研究では、高用量は用いられなかったが、それでも低用量のアスコルビン酸で有効性が確認されていた。50年前にマコーミック医師は一日2~4gのアスコルビン酸を使って患者が改善したことを報告した。クレナー医師はその量の10~20倍使うことを推奨した。

[Orthomolecular Medicine for Everyone: Megavitamin Therapeutics for Families and Physicians]より