栄養状態と身体の防御

健康な人はそうでない人よりも外傷に対して強い、ということに疑問の余地はないだろう。

我々の身体の自然な防御力は、最適の効率で保たれなければならない。
こうした状態が保たれていれば、まず病気にかかることはないだろう。関節炎になることはないだろうし、糖尿病をわずらう可能性は低く、細菌やウイルスが入ってきても体の中に定着できないだろう。

ここで、二つの問題がある。

第一は、栄養不良状態は身体の免疫力を普通の状態以下に下げるのかどうか、ということである。

これについては決定的なエビデンス(=明確な証拠)がある。
タンパクやカロリー不足からビタミンやミネラル欠乏まで、どんな栄養不良であれ、感染症にかかる確率を高め、外傷や手術や熱傷後の治りが遅くなる確率も高くなる。こうした栄養不良はぜひとも治療しておくべきだ。

第二の問題は、オーソモレキュラー栄養学者の勧めるように栄養状態を改善させれば、普通の状態よりも身体の防御力は上がるのかどうか、ということである。

これについては二つの立場がある。
栄養状態が高まったことによる健康は、多くの病気の発症率を減少させるほどに防御力を高めるし、もしすでに病気にかかっている場合には、治癒のスピードが上がる、と我々は考えている。

医師の多くは、ほとんどの人はすでに栄養面では十分健康なのだから栄養状態を改善する必要などないと考えているが、自分自身で患者の回復を観察した多くの医者は、栄養状態を改善すべきという主張を支持している。
多くの症状がオーソモレキュラー療法によって改善するのである。

このように、事実として改善するのだから、身体の防御力が再活性化されるのだという結論が導かれる。
ビタミンB3(ナイアシン)が関節炎を改善するのなら、ビタミンB3(ナイアシン)の摂取量を増やすことによって関節炎を予防できるはずである。栄養状態を改善することで免疫力が高まるのである。

1986年3月4日の『メディカル・ポスト』のトップ記事にこういうものがあった――「整形外科手術患者によく見られる栄養不良状態によって、患者の合併症の罹患率と重症度が上昇する」。

大学および私立病院で整形外科患者を対象にした研究では、栄養不良の患者はそれぞれ42%および68%だった。ある研究では、栄養状態不良の患者を対象に行ったサイム切断術(足関節部分での下肢切断手術)では85%が失敗(切断部の回復不良、感染、組織壊死)したのに対し、栄養状態が適切な患者では86%が成功した。

『メディカル・ポスト』誌のレポートは、こう結論している。
「栄養状態不良の患者に行った手術では、(手術後の合併症の)罹病率も、死亡率も、明らかに高いということを、外科医たちは昔から知っていた。しかし、栄養の重要性に関する言及は、整形外科の文献の中にほとんど現れない。今回の研究は、外科手術を受ける患者の中には栄養不良患者が、意外なほど多いことを示した」。

その他にも、動物および人間で行われた実験で、栄養補助サプリメントを使って免疫力を検証したところ、栄養の重要性を支持する結果が出た研究がある。

[Orthomolecular Medicine for Everyone: Megavitamin Therapeutics for Families and Physicians]より