風邪

世間では風邪のことを「普通の風邪 (common cold)」と言うけれど、詳しく調べてみると、世間が思っているほど「普遍的で共通している(common)」わけではないのが、風邪の厄介なところである。

「風邪 (cold)」という言葉は急性かつ短期間のウイルス性上気道感染症(時には細菌感染の後で起こることもある)を言うときに用いられる。

特徴的な症状は、不調感や、腫脹し湿った副鼻腔からの中程度から重度の鼻水であり、低めの発熱を伴うこともよくある。たいていの風邪はおよそ六日以内に治る。

鼻水がいっぱい出て風邪のように見えるが、ウイルスの侵襲によるものではない鼻水に悩む人がたくさんいる。これはアレルギー性の副鼻腔反応である。大規模な集団に対し何らかの風邪薬を試してみると、両方のタイプの「風邪」が存在する。しかしそれらは異なる原因による、異なる症状なので、両方が同じ治療によって改善したり、同じ方法によって予防できる、ということはまずないだろう。

つまり、抗ヒスタミン薬はウイルス性の風邪ではなくてアレルギータイプの風邪に向いているし、抗菌薬は鼻やのどの細菌感染症を効果的に抑制するだろう。

一方、アスコルビン酸はこれら三つの原因の全てに作用するが、アレルギータイプの風邪に対しては若干効果が落ちるだろう。乳製品へのアレルギーが、アレルギー性の風邪の原因であることが多い。

「普通の風邪」という大雑把な呼び名で一括りされてきた様々な「風邪」疾患の集合態ではあるが、それぞれの異質さに注目することで、アスコルビン酸の治療および予防因子としての有効性に関する多くの議論は、説明可能である。

アスコルビン酸は多くの「風邪」を本当に予防し、症状が出ているときには症状を改善するが、私の意見では、アスコルビン酸は文字どおり(普遍的で共通している、という意味での)「普通の風邪」に、つまりウイルス性の風邪に対して最もよく効く。

ウイルス性の風邪のひき方には二つのパターンがある。

一つは、寒気がしたりストレスを感じて、気道に潜んでいたウイルスが活性化し、血中のインターフェロンや抗体の低下とあいまって、風邪をひくというタイプである。
もう一つは、風邪をひいている人との接触、くしゃみによるしぶきの伝達によるタイプである。

アスコルビン酸は血中のインターフェロンや抗体の濃度を高めるため、ストレスによる風邪、しぶきによる風邪、両方の風邪に対して効果的にその発生を防ぐはずである。

ノーベル賞受賞者のライナス・ポーリングは二重盲検試験においてアスコルビン酸(ビタミンC)を一日たった1000mg摂るだけで風邪の発生を45%、総死亡率を63%減少させるといった報告が数多くあることを見出した。

クレナー医師は27年間、ウイルス性の感染症の治療にアスコルビン酸を使ったが、「私の患者には3年から15年、毎日ビタミンCを10g(10000mg)とかそれ以上飲み続けている人が数百人いるが、この人たちの90%は絶対に風邪をひかない。残りの10%はビタミンCをさらに足す必要がある」と述べた。

一日1000mgの量で45〜63%効果的であり、10000mgでは90%効果的だということなら、サプリを摂っていない人の典型的な食事からの摂取量である100mg未満では、風邪予防は望むべくもない。しかし国の勧めるRDA/DRIは妊婦も含めて皆一日100mg以下で十分だとしている。

ビタミンCは風邪に対する最も安全で、最も安価で、なおかつ最も効果的な予防および治療方法であることが研究により確認されている。

715人を対象とした研究で、実験群に風邪症状あるいはインフルエンザ症状が見られた場合、最初の六時間は一時間ごとにビタミンCの1000mgの投与を続け、その後は一日三回の投与で治療した。症状のない人々に対してはビタミンCを1000mgずつ一日三回投与した。
実験群の風邪症状およびインフルエンザ症状は対照群と比べて85%改善した。

「30年以上にわたってビタミンCの大量投与は風邪とインフルエンザに対する効果的な要因だと認識されている」とH・C・ゴートンらが述べている。

別の研究では、冬の60日間ビタミンCを摂った被験者は、プラセボ群に比べて風邪をひくことが有意に少なかったことを研究者は発見した。
仮に彼らが風邪をひいたとしても、プラセボ群に比べて、風邪は短期間であり、かつ重症度も低かった。バン・ストラテンらはビタミンCは効果的だと結論した。

ビタミンCは結合組織を強化することによりウイルスの侵襲に対する抵抗力を高める。同時に、ビタミンCは体の免疫系を強化し、フリーラジカル(生体においては主に活性酸素)を中和し、非常に高用量ではウイルスを殺す。

ビタミンCのこれらの重要な機能が協調して作用することで、風邪をひく頻度、ひいた際の重症度、持続期間を安全かつ効果的に軽減する。

研究者が16人の男性にプラセボあるいはアスコルビン酸を使って、500mgを一日4回摂取する二重盲検試験を行った。一週間、参加者は研究室で人工的に風邪ウイルスに感染させた8人の男性と一緒に生活した。アスコルビン酸、プラセボはいずれもさらに二週間にわたって服用を続けさせた。

プラセボを与えられた8人中7人が風邪を発症したが、アスコルビン酸を与えられた8人中では風邪をひいたのは4人だけだった。さらに、アスコルビン酸投与群では、風邪の徴候、症状がプラセボ群より統計上有意に軽度だった。

ライナス・ポーリングは正しかった。
つまり、風邪を予防する一番の方法はビタミンCを大量に摂ることなのだ。食事では精製した砂糖を避けることも有効である。

一つの一般的な予防法としては、8時間おきにビタミンCを1000mg摂ることである。
風邪をひき始めていると感じたら、起きている間は一時間おきにビタミンCを2000mg摂り、風邪がなくなるまでこの用量を続けるとよい。

これよりさらに頻回に摂取することでうまくやっている人がたくさんいる。
ビタミンCに対して腸が耐えられない(便がゆるくなる)症状が出れば、用量を50%減らすとよい。

ビタミンCの大量摂取により風邪およびその症状の持続期間を減らすことができる。一日の服用量の合計が多ければ多いほど、結果はすみやかに出て、かつ、好ましいものとなる。

最適用量は、おならや下痢が起こらないぐらいの量(緩下作用が出現する一歩手前の量)である。風邪を予防するのに最適なアスコルビン酸の用量は各人それぞれで、それは実際に自分で試して決めていくことができる。

自分にとっての効果的な服用量を見付けられた人は、風邪をひくことがなくなり、医師にかかる必要もなくなるだろう。

効果が出るのに必要な服用量が一日12000mg(12g)の人では、一日3000mg(3g)摂っても効果が出ず、相変わらず医者の世話になることになり、結果、「ビタミンCは効かない」と結論してしまうことになるだろう。

医師はアスコルビン酸の失敗を目にしがちで、そのためビタミンCに偏見を持っていることがよくある。きちんと効果が出るだけのビタミンCを摂っている人は、医者いらずである。

[Orthomolecular Medicine for Everyone: Megavitamin Therapeutics for Families and Physicians]より