アルギニンとシトルリン、オルニチン②

◉オルニチン回路とは

グルタミンはアンモニアとグルタミン酸になります。
しかしアンモニアをつくるのはグルタミンだけではありません。

アミノ酸の代謝において、アミノ基とαケトグルタル酸が結合すると、αケト酸とグルタミン酸がつくられます。
しかし運動時などはエネルギーを取り出すため、グルタミン酸はグルタミン酸脱水素酵素の働きにより、アンモニアとαケトグルタル酸になるのです。
つまりグルタミン酸も、アンモニアの発生源になります。

グルタミンに限らず、多めのアミノ酸(タンパク質)を摂取し、運動している以上、通常より多いアンモニアの発生は避けられません。プロテインやEAAを飲むようになったら、汗が臭うようになったという方は、少なくないようです。

ではアンモニアはどのようにして処理されるのでしょうか。

アンモニアは肝臓で尿素に変換されますが、毒性の高いアンモニアのまま肝臓まで運ぶのは危険です。そのため組織で発生したアンモニアは、アミノ酸のアラニンやグルタミンに変換されて、肝臓まで運ばれます。そこでアラニンやグルタミンはグルタミン酸になり、アンモニアに戻ってから、尿素になります。

アンモニアと尿素の関係を、もう少し詳しくみてみましょう。

アンモニアは肝細胞のミトコンドリアにおいて、カルバモイルリン酸に変換されます。それがアミノ酸の「オルニチン」と結合することによって「シトルリン」になります。
シトルリンはミトコンドリアから出て細胞質に移行し、アスパラギン酸と結合します。するとアルギノコハク酸ができます。
そしてアルギノコハク酸からアルギニンがつくられ 、アルギニンから尿素とオルニチンがつくられます。

つまりアンモニアからスタートし、最終的に尿素とオルニチンが生成されるわけです。
この回路を「オルニチン回路」または「尿素回路」と呼びます。

通常の場合、アンモニアはオルニチン回路によって全て処理されますので、汗や尿に出てくることはほとんどありません。汗や尿に含まれているのは尿素です。尿素そのものは、それほど臭くありません。しかし尿が排出されてしばらく時間が経つと、細菌によって尿素が分解されてアンモニアとなり、アンモニア臭さが出てくるのです。

プロテインやEAAを飲むようになってタンパク質の摂取量が増大すると、オルニチン回路の許容量を超えてアンモニアが増えてしまいます。また、トレーニング自体がアンモニアを大量に発生させてしまいます。そのため、トレーニングをハードに行ってプロテインを飲むようになると、オルニチン回路で処理しきれなかったアンモニアが尿や汗に出てくるようになり、アンモニア臭がしてしまうのです。

アンモニア臭を減らすには、オルニチン回路を活発にしてアンモニアの除去を促進することが重要です。
アルギニンやオルニチン、シトルリン、アスパラギン酸などを十分に摂取することで、オルニチン回路はスムーズに回るようになり、アンモニア臭も減るはずです。

なおアスパラギン酸はTCAサイクルにおけるオキザロ酢酸やグルタミン酸から容易に合成されるため、まず不足することはありません。

◉アルギニンかシトルリンか

アルギニンの弱点はアルカリ性が強いことです。また味も悪く、そのままパウダーで飲むのは難しく、カプセルで飲んだとしても胸やけすることがあります。

そこで、アルギニンの代わりにシトルリンやオルニチンを摂取するという方法があります。
オルニチン回路はスムーズに回っているため、シトルリンやオルニチンでも十分にアルギニンの代用となるのです。

22名の男性に一日2.4gのシトルリンを摂取させ、7日間継続したところ、血中アルギニンレベルが高くなり、自転車で4kmを走るタイムが短くなったという研究があります。
また一日6gのシトルリンを摂取したところ、高強度運動におけるパフォーマンスが改善し、酸素利用能も高まったという報告もあります。

オルニチン回路において、アルギニンはアルギナーゼによってオルニチンとなり、さらにシトルリンとなってからアルギノコハク酸になり、アルギニンに戻ります。
そのため、オルニチンよりはシトルリンのほうがアルギニンレベルを高めるには効果的だと考えられます。

ちなみに成長ホルモンの分泌を促進するためにはオルニチンの場合、体重1kgあたり170mgくらい摂取する必要があり、体重が80kgであれば13〜14g必要になってしまいます。
しかしアルギニンならば5〜9gで大丈夫です。
オルニチンやシトルリンに比べて安価でもありますから、アルギニンをベースにして、追加でシトルリンを少し使うというような方法でもいいでしょう。アルギニンとシトルリンを混合した商品もあります。

◉摂取方法

アルギニンも他のアミノ酸と同様、摂取後30分ほどで血中濃度は最大に達し、2時間後に半分となり、4時間ほどかけて元のレベルに戻ります。

しかし血中アルギニンレベルが最大になってから、NOが産生されるまでの間にタイムラグがあります。そのため血流が最大になるのはアルギニンを摂取してから90分ほど経ったころとなります。

摂取後60分したところで、十分に血流は増加していますので、運動の1時間くらい前にアルギニンを5〜9g摂取することで、運動時の血行増進効果や持久力アップ効果が期待できると考えられます。この場合、プロテインやEAAと一緒に飲んでも構いません。ホエイプロテインにはアルギニンが少ないため、アミノ酸バランスを改善するのにも良いと思われます。

なお前述の通り、アルギニンはアルカリが強い性質を持っています。食事によって胃酸が薄まり、胃内のpHが高くなるため、食後にアルギニンを摂取すると胃痛が起こるかもしれません。そのような方は空腹時に飲むようにしましょう。
「L-アルギニン」ではなく、「アルギニンHCL」という塩酸で中和したサプリメントもあります。これであればいつ飲んでも大丈夫です。

運動をしない日は起床直後の摂取がお勧めです。
アルギニンの成長ホルモン分泌効果を考えると、就寝時などはもともと成長ホルモンの分泌が高まりますから、タイミングがかぶってしまい、もったいないと思います。もちろん両方のタイミングで摂取してもよいですが。
ゼリータイプのアルギニンなども販売されており、手軽に持ち運べ、食べやすくなっています。


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