エビデンスがあるとされる治療が正しいか

データというのは通常は数字です。データ分析の際に、都合の悪いデータに何らかの理由を付けて、それを除外して分析すれば、簡単にデータを操作できます。生のデータは隠されています。

さらに、統計的処理で導かれた数字をどのように見せるかで、その論文を読む人の印象も変えることができます。

例えば、LDLコレステロールを低下させるスタチンという薬があります。このスタチンの中の「リピトール」という薬は、論文で心臓発作を36%低下させると雑誌『ランセット』に発表されました。

しかし、実際のデータを見てみると、薬を使った群では1.9%が心臓発作を起こし、プラセボ(偽薬)を使った群では3%が心臓発作を起こしました。つまり、その差はたった1.1%の違いしかありません。

確かに、「1.1%」÷「3%」を計算すると36%であり、これは相対的なリスク減少です。しかし、絶対的なリスクの減少は1.1%しかありません。およそ100人に1人しか心臓発作を防げません。

さらに薬を使っても使わなくても、全ての原因での死亡率は差がなかったのです。薬を使って心臓発作は少ないながらも防げたのに、死亡率が同じであるということは、その薬によって心臓発作以外の原因の死亡率が増加したことになります。

「36%」と「1.1%」では与えるインパクトは大きく異なります。36%リスクを軽減できると見せながら、実際にはたった1.1%しか軽減できていませんし、死亡率も低下させないのです。この36%という数字も、企業により宣伝に使われて、売り上げに貢献したのです。

加えて、コレステロールの問題は、コレステロールが健康にとって「悪いもの」という前提で研究が行われていますが、「コレステロール悪玉説」はただの仮説であり、間違っている可能性の方が高い。最初の前提が間違っていれば、その結果はエビデンスとして役には立ちません。

そして現在では、LDLコレステロール値が低いほど死亡率が高いというエビデンスがいくつも出ています。

つまり、EBMというものは非常に難しい問題をはらんでいるのです。もちろん、エビデンスの全く存在しない治療には、怪しい治療法が含まれている可能性があります。しかし、どのような治療も、最初は根拠は存在しません。また、多くの論文によりエビデンスが示されたとしても、ここに記したように、全てが信用できる正しいデータに基づいて得られたかどうかはわからないのです。

エビデンスのある治療が正しい治療とも言えず、エビデンスのない治療が間違った治療とも言えません。

利益相反のある人が論文を書き、利益相反のある人が治療のガイドラインを決めています。EBMのもとになるデータは企業の宣伝に使われ、企業の関与により操作されている可能性は否定できません。このような状態は「科学的」とは言わず、「商業的」と言うのではないでしょうか。


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