リンゴの産地は高血圧が少ない

「食塩原因説」の有力な根拠として引用されたのが、日本の東北地方で高血圧が多いという調査結果でした。
これまでの栄養学者の見解によると、食塩の摂取量は一日、10g以下が望ましいということですが、東北地方のその県では、一人あたりの食塩摂取量がそれよりもかなり多いです。そこで、食塩が高血圧を起こす犯人にされてしまったわけです。

もし警察がこの程度の状況証拠で殺人事件の容疑者を逮捕したとすれば、いたるところに殺人事件の容疑者が出現することになるに違いありません。
ところが疫学の世界では、証拠不十分なまま安易に有罪判決を下してしまうことが少なくありません。
そのため「食塩有害説」だけにとどまらず、冤罪事件が後を絶たないのです。

食塩の平均摂取量が多い地域で高血圧が多いというという統計があれば、とりあえず食塩と高血圧を結びつける仮説は成立するでしょう。ですが、それだけで結論を出すのはあまりに性急すぎます。実際、このときの調査では「食塩原因説」と矛盾する事実も出ていたと聞きます。個別に調べてみると、食塩の摂取量が少ないのに血圧が高い人もいれば、食塩摂取量が多いのに血圧が低い人もいたといいます。
一人ひとりの個体差から目を逸らしがちになるのも、疫学の抱える大きな問題点の一つです。
また、同じ東北地方でもリンゴの生産地では高血圧が少なかった。こうした事実は、いずれも研究者にとって都合が悪いために、「例外」として切り捨てられたのです。

リンゴをたくさん食べている人が高血圧になりにくいことは、栄養学的にも裏付けられています。
血圧を平常に保つためには、食塩により摂取されるナトリウムと、カリウムというミネラルの比率が重要です。
健康な体内にあるナトリウムのカリウムに対する比率は0.6です。よって食物から摂取されるナトリウムとカリウムの比も、ほぼこの数値に近いことが望ましいです。

カリウムはリンゴ、メロン、スイカ、バナナといった果物や野菜などに多く含まれています。食塩を平均より多く摂取するといわれる地域でも、リンゴを日常的によく食べる地域では高血圧が少なかったのは、これで説明がつきます。
したがって、高血圧の一つの原因は、食塩の過剰摂取ではなく、カリウムの不足といったほうが正しいわけです。

ナトリウムやカリウムは過剰に摂取されても、通常は適切な量だけ吸収されて、過剰分はすみやかに腎臓から尿へ捨てられる仕組みになっています。
しかし、この排出能力が低い人の場合、体液の濃度が高くなってしまうのです。

 

 


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