感情を動かすのは化学物質

感情とは、心持ち、感じ、快・不快などを主とする意識の主観的側面、ということになっています。これは、主観的な精神活動ですが、一般に一定の生理的変化を伴っています。生理的変化がからだに強くあらわれるものを≪情動≫あるいは≪情緒≫といいます。これは、国語辞典的な規定ですが、これを基礎として、脳生理学的な考え方を付加するとすれば、次のようなことになるでしょう。

感情というものは、情動にまでエスカレートする性質の現象であることからすると、これは全身的な過程です。さらにまた、感情というものは、一過性であるとはいえ、かなり長時間にわたって持続する性質の現象です。このような現象の主役は、神経系ではないでしょう。神経系が引き金になることは十分に想像できますが、主役は血中の化学物質であるに違いありません。その化学物質は、シナプスで放出された神経伝達物質である可能性が大きいでしょう。それならば、神経系が引き金をひく、と考えることができることになります。

猫という動物は、人間と比べて大脳の発達がはるかに劣るので、両者の対比には無理がありますが、ここに、かつて行われた猫の実験を紹介します。

猫は、敵に対した時、攻撃を仕掛けることもあり、逃げることもあります。その血液を調べてみると、ノルアドレナリンとアドレナリンとの量の比が、二つの場合で違うことを発見しました。そこで、両者の比を≪アドレナリン比≫と名付けて、一つの指標としたのです。猫が、攻撃を仕掛ける時、血中アドレナリン比は一より大きく、逃げ出す時、血中アドレナリン比は一より小さい。

攻撃あるいは逃走を、情動の延長上の行動とみることが許されるならば、感情をつくりだす神経伝達物質として、ノルアドレナリンとアドレナリンを想定することができるでしょう。これに、ドーパミンも加わるような気がします。

感情を物質過程に還元する試みのなかで、浮かび上がってくるのは、ノルアドレナリン・アドレナリン・ドーパミンなどの、アミン型神経伝達物質です。これらのすべては、≪カテコールアミン≫という名の化学物質のグループに属します。

ノルアドレナリンは哺乳類にとって最重要なホルモンである、といわれています。これは、このホルモンが感情にかかわるため、として理解されてよいでしょう。よく、人間は感情の動物だといわれます。とするならば、ノルアドレナリンの重要性は、猫におけるよりも人間のほうが大きいことになるでしょう。

ノルアドレナリンは、交感神経の伝達物質ですから、これの緊張の強弱は、感情を左右することになりかねません。

 

 


整体院&ピラティススタジオ【Reformer逗子院】
神奈川県逗子市逗子3-2-24 矢部ビル2階
☎︎
050-5884-7793