物質代謝に対する考え方

生体の内部で起こる化学変化をひっくるめて、物質代謝または物質交代といいます。昔、新陳代謝と呼んだものがこれです。

生体のなかに栄養物質としてとりいれられた炭水化物や脂肪はエネルギー源となります。このとき、それぞれにある化学変化がおこなわれます。それは決して、炭水化物や脂肪に含まれる炭素や水素が酸素と化合するというような簡単なものではありません。たとえば、炭水化物が水と二酸化炭素に分解するまでには、クエン酸回路とよばれる複雑な過程を経なければなりません。

物質代謝は、生体の組織や器官をつくるタンパク質の場合にとくに重要です。まず、人体を構成するタンパク質は25種のアミノ酸の結合体です。したがって、この組織や器官が物質代謝をいとなむためには、外界からこれらのアミノ酸を栄養物質としてとらなければなりません。

ところが、25種のアミノ酸のうち、とくに、リジン・メチオニン・スレオニン・ヒスチジン・バリン・ロイシン・イソロイシン・フェニルアラニン・トリプトファンの9種は、必須アミノ酸とよばれて、そのままの形で外からとりいれなければなりませんが、他の16種はグリコーゲンなどから人体がつくることができます。そこで、組織や器官の物質代謝のためには、必須アミノ酸のすべてをふくむタンパク質の適量をとる必要のあることがわかります。

食物としてとりいれられたタンパク質は、消化酵素によってアミノ酸に分解してから腸壁に吸収され、血液にとけて代謝のおこる場所まで運ばれます。そして、たとえば、組織タンパク分子のメチオニンがはずれて、新しいメチオニンといれかわり、同時にグルタミン酸がはずれて、その場で新しくグルタミン酸が合成されてもとの位置におさまる、というような変化が起こります。この変化は、物質交代という呼び名にふさわしい現象です。

このようにして、物質代謝が、つねに元どおりのものをつくるのであれば、生体は、いつまでも同じものでいることになります。このような状態は、細胞の環境である体液の組成が一定に保たれ、必要な酵素がすべて揃っているという条件のもとにしか可能ではありません。

しかし、このような条件は現実にはありえません。寄生生物のつくった有毒物質が体液にまじって、酵素の働きを妨げたり、細胞内の代謝産生物がその原形質を変質させたりするからです。

もしも、物質代謝の結果、以前と違う細胞や組織がつくられれば、それはいわゆる異常代謝または代謝異常です。

強い日光に長時間さらされていると、皮膚にメラニンをつくる代謝が亢進します。これも一種の代謝異常とみられないことはないですが、本質的には、皮膚の内部を保護するために、光を吸収する色素をつくりだしたわけですから、一種の適応と考えることができます。

髪の毛が異常に抜けるのは、毛のタンパク質ケラチンをつくる、毛根における物質代謝が異常に衰えたことのあらわれです。正常な状態における頭の部分の皮膚の毛根は、その半数ほどが機能を停止しています。すなわち、半数交代で毛をつくっているのです。抜け毛は、毛根が休眠にはいるときに起こる現象です。したがって、極端に抜け毛が多いということは、ふつうならばまだ休眠の時期にならないはずの毛根が、急いで休眠にはいったことを示しています。そこで、ケラチンをつくる物質代謝が全般的に衰えたと考えるのです。

骨のタンパク質に含まれているリン酸カルシウムのようなものも物質代謝をおこなっています。この場合、ストロンチウムがカルシウムとよく似た性質の元素であるために、カルシウムがはずれたあとにストロンチウムがはいることがあります。これも一種の代謝異常です。

このストロンチウムが放射性であれば、この分子は放射性をあらわします。しかしやがて、このストロンチウムもカルシウムと交代する時期がくるわけです。

このようにして、人体のすべての組織や器官がひと通り物質代謝を完了するまでには、8年の時間がいるといわれています。

 

 

 


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