◉甘味料の種類(天然と人工、糖アルコール)
「干し柿」などに代表されるように、古来より人間は甘味を追い求めてきました。ですからサトウキビやテンサイからつくられる「砂糖」は、昔から非常に貴重なものだったのです。
多くの植物は光合成でできる糖質をデンプンとして蓄えるのですが、サトウキビとテンサイは例外的に砂糖として蓄えます。
したがってサトウキビやテンサイから抽出した砂糖は、もちろん「天然甘味料」です。他の天然甘味料としては、ハチミツやメープルシロップが代表的なものとなります。
ハチミツなどに比べると砂糖は精製度が高いため、あまり「天然」という感じがしないかもしれません。しかし果物から抽出した果糖や、麦芽から抽出した麦芽糖なども、天然甘味料に分類されます。
ただし「抽出」というと語弊があるかもしれません。トウモロコシなどのデンプンにαアミラーゼやグルコアミラーゼなどの酵素を働かせると、ブドウ糖にまで分解することができます。そしてできたブドウ糖に異性化酵素であるグルコースイソメラーゼを働かせると、ブドウ糖が果糖になるのです。
こうして「ブドウ糖果糖液糖」や「果糖ブドウ糖液糖」が非常に安価につくられています。
ここまで人間の手が加わると、天然という呼び方は少々腑に落ちないかもしれません。
なお「ステビア」も天然の甘味料です。これはキク科の植物で、南米ではマテ茶を飲むときに甘味をつけるために使われたりしているそうです。
◉人工甘味料
天然には存在しない、人為的に化学合成した甘い物質を、人工甘味料と呼びます。サッカリンやアスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロースなどが代表的な人口甘味料です。
甘味が非常に強く、体内で消化吸収されないためカロリーとならず、ダイエットなどに用いられます。
◉糖アルコール
糖質にある「アルデヒド基」に、水素をくっつけるとアルコールができます。これが糖アルコールです。
こうすることによって甘味が発生し、消化吸収が悪くなるため、カロリーとしては少なくなるため、甘味料として使用されます。
「〜トール」、という名前の甘味料は糖アルコールだと考えてよいです。
糖アルコールは天然に大量に存在し、キシリトールはイチゴやキノコ、ソルビトールはリンゴやナシ、プルーン、マンニトールは昆布、エリスリトールはサクラソウの根や藻類に天然に含まれます。
また脂肪の一部であるグリセリン (グリセロール) も糖アルコールです。
◉甘味料の安全性
果糖や砂糖の問題点については前項の通りです。天然だから安全ということにはならないと、もうお分かりいただけるはずです。
では人口甘味料や糖アルコールの安全性はどうなのでしょうか。
◉人工甘味料は下痢を引き起こす
人工甘味料は体内で消化吸収されないため、カロリーはほとんどありません。しかし消化されないということは、腸の中で人工甘味料が停滞してしまうわけです。すると、その部分だけ浸透圧が高くなってしまいます。それを調整しようとして、水分を引き込み、浸透圧を下げようとする働きが起こります。
こうして腸の中に水分が引き込まれるため、人工甘味料を使いすぎると、お腹が緩くなってしまうことがあります。これを逆に利用して便秘を治すということも可能ですが。
人工甘味料は安全なのか、というテーマについては古くから議論 が行われて
いて、安全性が確認された論文は数多いものの、否定派は「それは起業が金を出した実験だから信頼できない」としています。
◉砂糖との比較
問題は、砂糖や果糖などの天然甘味料と、人工の甘味料とでは、どちらが安全なのかということです。
もちろんヒトを使って厳密な二重盲検法を行うことはできませんし (砂糖か人工甘味料かは、すぐバレる) 、長期に渡って砂糖だけあるいは人工甘味料だけを摂取してもらうわけにもいきません。
ですからクリアな結論は出しにくいのですが、ともあれBMJに出たシステマティック・レビューとメタ・アナリシスによれば、糖尿病を発症する割合は、砂糖添加が1サービング増えるたびに18%増加、人工甘味料添加が1サービング増えるたびに25%増加、フルーツジュースが1サービング増えるたびに5%増加したということです。
なお、ここでいう砂糖(sugar)は、いわゆる果糖ブドウ糖液糖のようなものを含みます。
こう見ると、天然であろうと人工であろうと問題があるようです。
しかし人工甘味料はカロリーが少なく、糖質摂取量も少なくなっているはずなのに、なぜ糖尿病を引き起こしてしまうのでしょうか。
ヒトでの実験ではありませんが、マウスを3つの群に分け、普通のエサに加えて「サッカリン入りのヨーグルト」と「アスパルテーム入りのヨーグルト」、「砂糖入りのヨーグルト」を12週間与えたところ、すべての群で摂取カロリーが同じなのにも関わらず、人工甘味料のグループが一番体重が増加したという結果が出ています。
この実験のポイントは、「摂取カロリーは結果的に同等だった」というところ。つまり人工甘味料群のマウスはヨーグルト以外のエサを砂糖群のマウスよりも大量に食べていたということになります。
摂取カロリーを減らすはずの人工甘味料を使用することで、食欲がかえって増加したわけです。
実は膵臓には甘みを感じるレセプターが存在し、人工甘味料の刺激によってインスリンが分泌されます。
インスリンが分泌されれば、当然血糖値は低下します。普通の食事でもインスリンは分泌されますが、食事で糖質を摂取しているわけですから、血糖値は回復します。だから食後にそれほど空腹感は起こりません。
しかし人工甘味料の場合は糖質を摂取していないため、血糖値は低下したままになります。そのため空腹感が強まり、結局食べる量が増えてしまうのです。これが原因となって糖尿病を誘発してしまうのかもしれません。
ではダイエット効果についてはどうでしょうか。
やはりBMJの論文ですが、砂糖の多く含まれる清涼飲料水を10週間に渡って飲んだところ、体重と体脂肪率、血圧が上昇しました。
しかし人工甘味料を使った群は、そうならなかったという結果が出ています。
この研究では人工甘味料群の摂取カロリーが明らかに少なくなっており、タンパク質や脂質の摂取量は大きく違わなかったことから、「食事量さえ増えなければ、人工甘味料群のほうがダイエットには有効」だと言えそうです。
では他の安全性はどうでしょうか。
50歳から70歳の約26万人を対象にした研究で、ダイエットソーダを飲むと、「うつ」のリスクが31%増加し、またダイエットフルーツポンチでは、なんと51%のリスクが増加となっています。
普通の砂糖が使われたソーダでは、22%のリスク増加。普通の砂糖が使われたフルーツポンチだと8%のリスク増加。特にアスパルテームが多いとリスクが増加しやすい(36%) ようです。
なおコーヒーを4杯飲んでいる人は、「うつ」リスクが10%減少し、カフェイン摂取が多い人は17%のリスク低下が認められています。
しかしこれも人工甘味料単独の作用と考えるより、人工甘味料使用による上記の理由での「低血糖」と、それに引き続く糖質の過剰摂取が問題だと考えるほうがしっくりきそうです。
これだけ長期に渡って研究が使われていることからも考えても、人工甘味料による直接的な悪影響は、それほど気にしなくても良さそうです。むしろ人工甘味料摂取の後に起こる食欲増加に気を付けることが重要なのかもしれません。
砂糖や果糖を大量に摂取するよりは、人工甘味料を少量だけ使って消費カロリーに気をつけるようにしたほうが、かえってリスクを減らすことができると思われます。
◉糖アルコールは安全に使える
人工甘味料は使いたくないという方は、糖アルコールを使うという選択肢もあります。
人工甘味料がインスリンの分泌を引きおこす可能性について前述しましたが、例えば「ラカンカ」とエリスリトールを組み合わせた「ラカント」という甘味料は人体での実験でインスリンを高めないことが示されています。
ラカンカはウリ科の植物で、甘みを呈するため中国ではこれ自体が天然の甘味料としても使われています。
血漿中の水分量を増やし、体内の水の量を増やす「グリセリン」も糖アルコールの一種で、かなりの甘味があります。
基本的に糖アルコールは安全性が確立されており、問題なく使えます。
しかし犬を飼っている方はキシリトールに注意です。
人間と違って犬がキシリトールを摂取すると大量にインスリンが分泌され、肝障害などを起こして致命的となることがあるのです。
また、少々味は悪いのですが、天然甘味料のステビアも安全に使えそうです。
ステビアにはインスリン抵抗性を改善したり、抗酸化作用によって肝臓や腎臓を護ったりする作用が期待できます。 南米では長年に渡って医療用として使われており、ステビアは神聖な植物であり、崇拝の対象だったそうです。
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