生命をにぎる酵素

酵素とは何かについて若干の説明をしておきます。

車のエンジンでガソリンが爆発する時、排ガス中には、二酸化炭素と一酸化炭素とがあります。また、窒素の燃焼による酸化窒素もあります。アフターバーナーと呼ばれる触媒装置を通すと、一酸化炭素は空気中の酸素と化合して二酸化炭素になります。この場合の触媒は、例えば白金ですが、白金の仲立ちによって、一酸化炭素は比較的低温で酸素と結合するのです。このように、反応の仲立ちをする物質を「触媒」といいます。

生体は、代謝のために触媒を用意しています。この、生体特有の触媒をさして酵素というのです。そして、酵素を仲立ちとする化学反応を「酵素反応」といいます。これがすなわち代謝です。代謝なしに、私たちは生きていられない。そして、代謝には酵素が要ります。酵素はタンパク質です。したがって、生きていくという目的達成のためには、まずタンパク質が必要です。それは、食品から摂らなければなりません。

タンパク質を口に入れれば、それがただちに酵素に変化するかというと、そうではありません。では、酵素を食べれば何より手っ取り早いかというと、そうでもありません。

代謝が生命の実体であるということは、酵素が生命をにぎっているということです。私たちは、すべての必要な酵素の製法を、親から教えられています。それは「遺伝子」または「遺伝情報」の形においてです。私たちは、親譲りの方法によって、食品中のタンパク質から、必要な酵素をつくりだすことができます。

タンパク質を十分にとっている限り、私たちは、代謝のスムーズな遂行を保障されるかというと、そうではありません。これは酵素というものが、「主酵素」と呼ばれるタンパク部分と、「補酵素」と呼ばれる非タンパク部分と、二つの部分からできている場合が多い、という事情によります。補酵素が不足すれば、主酵素は働けなくなり、代謝は進行しません。