酒と視力

酒豪を誇る人がいるかと思うと、ちょっと一杯飲んでも、顔が赤くなってしまう人もおり、酒は全く飲まないという下戸もいます。

酒に弱い人間と酒豪と、どこが違うのでしょうか。
同じ酒でも、上戸なら薬、下戸なら毒ということでも、あるのでしょうか。

まず第一に、日本酒にせよ、洋酒にせよ、ビールにせよ、その特徴はアルコールを含んでいることです。それは、原則としてエタノール(エチルアルコール)です。
しかし、醸造過程でメタノール(メチルアルコール)のできてくるブランデーのような酒もあります。ブランデーが、必ずメタノールを含むわけではありませんが、1、2%のメタノールを含む場合があるのです。

戦後に「カストリ」という名の酒が出回ったことがあります。
これにメタノールが含まれていて、目を悪くする人があったようです。
メチルアルコールは、「目散るアルコール」というニックネームを付けられていたようです。

要するに、メタノールは目に悪いのです。
ブランデー以外の酒ならばメタノールに縁がないから、目に悪いはずがない、などと考えては間違いです。
メタノールはすべての酒に関係があるのです。

メタノールは「メチル基」という名の原子団を抱えています。
一方、食品のなかにもメチル基を抱え込んだものは少なくありません。
タンパク質を構成するアミノ酸でいえば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシンなどが、そうです。
メチル基を抱え込んだ栄養物質を起点とする代謝のなかには、メタノールをつくるものがあります。
これは中間代謝生成物であって、やがて、「コリン」になります。コリンは、リノール酸などと結合して、「リン脂質」レシチンをつくります。

要するに、メタノールができても、片っ端から他の物質に変化していくのです。

それなら、メタノールは生理的な物質であって、別に神経をとがらすこともないだろう、というような考え方の余地がありそうです。
しかも、メタノールは中間代謝生成物ですから、大量に蓄積することはありません。
正常状態の血液100mlの含むメタノールの量は、2、3mgだといいます。

メタノールもエタノールも、アルコールの仲間であって、程度の違いはあっても、共に有毒物質です。
そして、肝臓で薬物代謝をうけます。
これは、アルコール脱水素酵素による酸化の形をとります。

このアルコールの解毒の鍵をにぎるアルコール脱水素酵素は、メタノールよりもエタノールに対して、優先的に作用します。
その結果、酒を飲むと、この酵素は本来の役目であるメタノールの分解を後回しにして、エタノールの処理にかかります。
そのために、生理現象のなかでつくられたメタノールが、未処理のままおかれて、次第に蓄積します。
ですから、エタノールを飲んだのに、メタノールの害をまともに受けることになります。
メタノールを飲んで悪いというのは、生理的メタノールが未処理のまま残っているところに、さらにメタノールを追加することになるからです。

もっとも毒性の順でいうと、一番軽いのはメタノール、次はエタノール、次は地酒に含まれているアミルアルコール(フーゼル油)です。
アミルアルコールの毒性は、エタノールの10倍を超えます。

こういう事実があるのに、メタノールの評判が悪いのは、これの分解速度が格段に遅いことからきています。分解に手間取るから、メタノールが余って、毒作用が持続するのです。

メタノールが酸化すると、ホルムアルデヒドができます。これが肝臓でメタノールと結合すれば、メチルフォルマートができます。このメチルフォルマートが、メタノールによる視神経障害の犯人とされているのです。

第二次大戦に参加したアメリカ軍人の失明者の6%はメチルアルコールが原因だといわれますが、これは実は、メタノールの単独の毒作用ではなかったのです。
メチルフォルマートの前身ホルムアルデヒドの段階でも、網膜の呼吸を阻害する作用は、メタノールの1000~3000倍もあるのです。

この長々しい話は、酒を飲めば網膜の呼吸が困難になる、という現象の解説です。

アルコールで目が朦朧とするのは、脳に影響が出たせいばかりではないのです。

そこで今度は、アルコールの解毒、つまり薬物代謝のメカニズムの問題が出てきます。

エタノールが体内に入ると、まず、アルコール脱水素酵素の作用を受けてアルデヒドとなります。そしてこれは、アルデヒド酸化酵素の働きでアセチルに変わります。

アセチルから先は二つのコースがあります。
一つはエネルギー発生コースであり、一つは脂肪合成コースです。
酒を飲んだ時、その代謝が第二のコースをとれば、その人の体は、皮下脂肪がついて太ってくるでしょう。

この二つのコースの分岐点にいて、ポイントを第二のコースに切り換えるのは糖質です。
酒の肴に糖質は、賢明ではありません。

ところで、アルデヒド酸化酵素の補酵素はナイアシンです。
したがって、ナイアシンが不足すると、アルデヒドはアセチルになることができず、蓄積して毒性をあらわしてきます。
悪酔い、二日酔いのたぐいがこれです。

酒には肴がつきものとされます。
肴のタンパク質に含まれるアミノ酸トリプトファンから、ナイアシンがつくられるからです。
したがって、トリプトファンの多い食品が、肴として良いことになります。
その例は、牛肉、卵、鶏肉、マグロ、魚肉などです。

肴なしで酒を飲んでは、ろくなことはありません。
もっとも、アルデヒド酸化酵素を阻害して気分を悪くし、酒を嫌いにする薬、アンタブースというものもあります。

トリプトファンからナイアシンへの代謝もただではできません。
補酵素として、ビタミンB2とビタミンB6が必要なのです。
要するに、ナイアシンそのものを口に入れなくても、タンパク質さえあれば何とかなるといったところで、ビタミンB2とB6がなければ、悪酔いは免れない、ということです。

 

 


逗子.葉山.鎌倉.横須賀.藤沢.横浜地域で整体&マシンピラティスなら
整体院&ピラティススタジオ【Reformer逗子院】
神奈川県逗子市逗子3-2-24 矢部ビル2階
☎︎
050-5884-7793