鉄不足にはタンパク質と錆びる包丁

貧血だと言われる人は、女性には多い。

なぜそうなのかなど、今更申し上げる必要もないくらいです。統計によれば、イギリスでも若い女性の半分は、つまり50%は貧血だそうですが、日本では、社会人女性の80%以上がそうだと言われます。貧血と診断されなくても、潜在的に鉄不足の方を含めれば、ほぼ全員かもしれません。

では鉄不足がなぜ日本に多いかと言えば、おそらく第一の理由は、痩せたい一心の食事制限が、低タンパク食を招いていることです。普段の食生活にレバーを食べる習慣がないことを第一の理由にあげる人もいます。

そして第二の理由は、包丁をステンレス製にかえたことも原因ではないかと思います。
レバーは今日では、飼料問題や環境問題があるため汚染物質の貯蔵庫となりやすい。そのために敬遠する向きがあるのは致し方ないことなのかもしれません。貧血が嫌なら豚や鶏のレバーを、などとかつてのように書き立てるわけにはいかなくなりました。

ところで昔は、包丁といえば、赤さびと縁の切れない代物でした。それが案外、人体への鉄の給源として格好のものだったのです。鉄の赤さびは、腸から吸収されやすい形の化合物です。ステンレスの包丁では、せっかくのものを台無しにしてしまうのです。赤さびは吸収されやすい上に、食材を切っても剥いても、そこにしみついて口に運ばれます。錆びる包丁やフライパンでの料理には全て何ppmかの鉄があって、貧血を救っていたのです。

血液中の赤血球を赤く染める色素をヘモグロビンといいますが、それは鉄を含むタンパク質です。鉄が足りないと、ヘモグロビンが欠乏し、赤血球数が減って、血の色はピンクになります。ヘモグロビンの役目は、肺で酸素を受け取って全身に配給することです。だからこれが不足では、酸欠状態が起きて貧血症状があらわれます。

世が汚染時代となって、貧血の原因は増えてきました。車の排ガスに含まれている鉛は、造血機能を妨げるばかりでなく、赤血球の寿命を三分の二に縮めます。排ガスの一酸化炭素、一酸化窒素は酸素を押しのけてヘモグロビンと結合し、その酸素運搬を妨害します。光化学スモッグのオキシダントの主成分として知られるオゾンは、ヘモグロビンが組織に辿り着いて酸素を放出するのを抑えます。また、中性洗剤ABS、LASは、赤血球からヘモグロビンを追い出しにかかります。

こうして数え立てれば、私たちを鉄不足にする原因はきりがありません。
汚染物質による公害は、貧血からの逃げ道をふさいだようなものです。
未熟児を生んだ母親は妊娠時に鉄不足だった人が多いなどと聞くと、この問題は重大です。

包丁はステンレス製でなく、ぜひ赤さびの出る鉄製をお使いになることをこの際おすすめします。

そしてまた、レバーの問題は置いておいて、とにかく高タンパク食をおすすめします。
ヘモグロビンは鉄タンパクですから、タンパク質が不足したら、これをつくることができません。