抗ガンビタミン

かつてワールブルクは、細胞を嫌気性解糖に追い込むことが発ガンの契機になると考えました。ガン細胞は、正常細胞と違って、エネルギーの産生を主に解糖によって行うことを見たからでした。彼は、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシンなど、クレブスサイクルの要求する栄養物質の不足が、細胞を嫌気性解糖に追い込んで、それをガン化すると考えました。ここからすれば、抗ガンビタミンは、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、コエンザイムQなどとなります。

一方、ラジカルや活性酸素が発ガンの原因になることが知られています。そこで、抗酸化ビタミン・ミネラルが、抗腫瘍ビタミン・ミネラルの一角を占めることが考えられます。ビタミンEを塗布してのマッサージによって、乳腺腫、子宮筋腫、卵巣嚢腫などの消退も報告されています。

また、ポーリングは、ビタミンCのガンに対する効果を強調しました。ガン組織は周囲の結合組織を侵潤して大きくなるわけだから、結合組織を強化すれば、ガン細胞の増殖を抑え込むことができると、彼は考えました。ビタミンCは、コラーゲンの正常化に役立つばかりでなく、結合組織を構成する粘質多糖体ヒアルロン酸を守ってくれます。ガン細胞はヒアルロン酸分解酵素を分泌するが、ビタミンCはこれを阻害するのです。

ポーリングによれば、末期ガンの患者でも、ビタミンCを大量に投与すれば、その20%が天寿を全うします。

ビタミンCのガン予防効果として最も無難に通用しているのは、発ガン物質ジメチルニトロソアミンの合成阻害作用です。ハム、ソーセージなどに発色剤として使われる亜硝酸塩には発ガン性があります。畜肉や魚肉に含まれているジメチルアミンが亜硝酸塩に結合すると、より強力な「ジメチルニトロソアミン」ができます。ビタミンCは、亜硝酸塩とジメチルアミンとの結合を阻害して、ガンの予防効果をあげるのです。

また、ゴス、リットマンの両氏は、ビタミンCの濃度が45ppm以上の臓器は、ガンになりにくいといっていました。ビタミンCを特に大量に含む臓器の例は、眼球、卵巣、副腎です。これらの臓器はガンになりにくいはずなのですから、これが発ガンする人の食生活は、よほどのビタミンC不足といえます。

ビタミンCは、さらに「インターフェロン」合成に関わっています。インターフェロンは抗ウイルス因子として発見された糖タンパクですが、これがある種のガンに対して抗腫瘍作用のあることが報告されています。

ガン患者の血液の特徴として、亜鉛の含有量の少ないことが見出されています。「胸腺」は免疫機能の中心ですが、亜鉛が欠乏すると、これが萎縮し、「胸腺ホルモン」の量が減少します。こうして免疫応答が減弱することが、発ガンの下地をつくる、という見解があります。そこで、抗ガンミネラルとしての亜鉛の価値がクローズアップされるのです。

抗ガンミネラルとしてはセレンが有名です。疫学的調査の結果、セレンの含有量の多い土地の住民にガン患者が少ないという事実が、アメリカで発見されました。それが、セレンが脚光を浴びるに至った契機です。セレン、ビタミンC、ビタミンEの大量投与によって、胃ガン、皮膚ガンの90%がなおった、という報告もあります。

また別に、ガン組織と非ガン組織とのビタミンA含有量の比較が行われました。この結果によれば、ガン組織中のビタミンA含有量は、非ガン組織のそれに比較して顕著に低いです。動物実験ではありますが、人工的に発生させた肺ガンが、ビタミンAの投与によって抑制される、という報告があります。アゾ色素はラットに肝臓ガンを発生する物質ですが、ビタミンB2をこれとともに投与した場合、発ガンが抑制されます。

ビタミンとガンとの関わりは、意外に深いのです。

 

◉ 抗ガンビタミンのリスト
→ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンA、ビタミンK、プロビタミンA、ナイアシン、コエンザイムQ

◉ 抗ガンミネラルのリスト
→セレン、亜鉛