日本人はビタミンA不足が多い

ビタミンAは魚の肝臓にあります。カボチャ、ホウレン草、ピーマンなど、いわゆる濃色野菜に含まれているオレンジ色の色素カロチンは、人間の小腸壁で、一部分が分解してビタミンAになります。カロチンを「プロビタミンA」(ビタミンA前駆体)と呼ぶのは、そのためです。

わたしたちがビタミンAを欲しいとき、濃色野菜を食べてもよし、卵やバターを食べてもよし、ということになります。卵やバターのビタミンAは、飼料にした植物からきたものです。

日本人の食習慣だと、ビタミンAの不足はむしろ当然です。欧米人ほどたくさんの卵やバターを口にいれないからです。

ビタミンAを積極的に摂ろうとすると、薬剤の形のものに手が出ます。昔はこれを、タラやハリバット(聖魚)などの肝臓からとっていたようですが、スイスのロシュが合成に成功してからは、魚の肝油をとる技術は廃れました。今では、市販のビタミンAは、例外なしにロシュの合成品を指すと思ってよいようになっています。

ビタミンAの「力価」は、国際単位(IU)であらわします。そして、一日必要量は、天然品でぎりぎり2500IU、理想値は4000IUということになっています。

ビタミンAの分子の立体的な形は、20種あまりあるようです。そのうち「全トランス型」という形のものだけが、生理的活性をもっています。「非全トランス型」もビタミンAには違いありませんが、網膜だけでしか生物活性をあらわしません。

これは、天然品と合成品との違いを考える場合、重要なポイントになります。生物活性のないものは、役に立たないわけだからです。

タラの肝油の場合、全トランス型が80%、非全トランス型が20%になっています。合成品は、効果の点で天然品に大幅に劣るのですが、たぶんその原因は、全トランス型の比率が低いことにあると思います。ビタミンA剤は100%合成品ですから、バターなどの脂肪と一緒に摂らないと、吸収されないでしょう。

薬剤として「◯◯肝油」の名で市販されているものは、合成ビタミンAによって力価を高めてあるのが普通です。

分子の立体的な形など、こだわらなくてよさそうにみえますが、からだは厳重にこれを差別します。トランス型に対立するのはシス型で、これが少しでも混じった形のものは、ビタミンAでありながら、細胞膜以外のところでは、ビタミンAとして働けないのです。ビタミンFともいわれるリノール酸の天然品は全シス型なのに、マーガリンのそれはトランス型をだいぶ含むことがわかって、問題になっています。世界的にはトランス脂肪酸を禁止する風潮は拡がってきたと思いますが、日本ではまだ根強くマーガリンは利用されています。

天然ビタミンAと合成ビタミンAの効果の違いの例ですが、指先のあかぎれに使ってみて、合成品10000IUではどうにもならなかったものが、天然品500IUですっかりなおった、というケースがあります。分子の立体的な形しだいで、ビタミンAが代謝に入り込めたり、入り込めなくなったりするわけですが、生体にはこのようなきびしい条件があるのです。

ビタミンAが不足すると、鳥目になることはよく知られていますが、これ以外にコンドロイチン硫酸という粘質多糖体が十分につくれないことからくる障害が、意外に大きいのです。このために、皮膚では肌荒れやウオノメなどができやすく、気管や胃腸の調子が悪く、歯や骨、とくに椎間板などの軟骨が弱くなります。

ビタミンAを大量に与えて、細胞内小器官リゾゾームの膜を不安定にすることに、重要な意味をもたせる場合もあります。

至適量には個体差がありますが、通常のビタミンA摂取量は、天然品で10000IU~25000IUくらいが推奨できます。

 

 


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