薬物代謝ビタミン

体内に侵入する、アスピリン、PCBなどの外因性物質、あるいは体内でつくられる性ホルモンなどの内因性物質を酵素的に処理して不活性の物質に変える過程を「薬物代謝」といいます。
生体の合目的性からすれば、これは防衛機構として機能するはずのものですが、現実には、対象物質をかえって毒性の強いものに変える場合もないではないです。ただし、ここでは、薬物代謝を防衛機構として機能するものに限定しました。

一方、「解毒」という言葉があります。
これは、非酵素的化学反応によって、有害物質が毒性を失う現象をさしています。したがって、解毒と薬物代謝とは次元を異にする現象です。これを薬物代謝ビタミン広義にとって、薬物代謝を解毒の一種とする見方が実際的でしょう。

解毒の対象になる厄介な物質の多くは不溶性です。これを水溶性に変えることができれば、それは腎臓から排出されるので、解毒の過程が成立するわけです。
一般に不溶性の物質は、水酸基(OH基)の付加によって水に溶けるようになります。このとき、水酸基の数が多い方が、水溶性が増大します。

脂溶性の物質に水酸基を付加する作用を持つ酵素としては、「チトクロームP450」が有名です。この鉄酵素の合成には、ビタミンCとビタミンEが関わっています。この二つのビタミンと鉄が、薬物代謝ビタミン・ミネラルのトップにくることになります。

不溶性の物質に水酸基を付加する方法は、チトクロームP450以外にもあります。その場合は、ビタミンB2やナイアシンを補酵素とする酵素が働きます。口紅に使われるタール色素などは、このようにして薬物代謝されます。

解毒ないし薬物代謝にはいろいろな種類がありますが、ビタミン・ミネラルの関与しないと考えられるものを、ここでは取り扱いませんでした。

チトクロームの鉄はヘムになっています。ヘム合成系ビタミン・ミネラルは、ここでは省いています。

◯薬物代謝ビタミンのリスト
→ビタミンC、ビタミンB2、ビタミンE、ナイアシン、ビタミンA

◯薬物代謝ミネラルのリスト
→鉄、亜鉛、カルシウム、マンガン