変形性膝関節症とは

膝関節の軟骨がすり減る

痛みと膝の変形が主な症状

中年以降、膝の痛みに悩まされる人は多く、そのなかには、徐々に膝の形がO脚やX脚に曲がってきて、歩行が困難になるといった症状が出てくる場合があります。これが変形性膝関節症で、膝の関節軟骨がすり減り、膝に痛みと関節の変形が生じてくる病気です。

高齢化の進む日本では、近年、運動器症候群(ロコモティブシンドローム、以下ロコモ)という新しい考え方が注目されはじめています。運動器とは、体の動きにかかわる骨や関節、筋肉、靱帯などのことです。

ロコモは、けがや病気、加齢によって運動器に支障をきたし、要支援・要介護になるリスクが高い状態を指します。その代表的なものが、変形性膝関節症です。

最近の調査では、介護が必要になった理由の約10%が関節の病気とされます(「平成3年国民生活基礎調査の概況」厚生労働省)。変形性膝関節症の患者さんは今後も増加が推測され、その予防が大きな課題となっています。

日本全国で、約800万人がこの病気で悩んでいる

変形性関節症と骨粗しょう症を中心に、骨・関節、筋肉などの障害について危険因子を明らかにするために、目下、約3000人を対象とした大規模な調査(ROADプロジェクト)が進んでいます。その調査結果によると、膝のX線画像を撮り、変形がみられる割合(症状のあるなしは問わない)は10歳以上で、女性8.4%、男性1.6%と報告されています。男性より女性に多いこと、高齢になるほど増えることもわかっています。

この割合に当てはめて、日本全体では、一体どのくらいの人がこの病気をもっている可能性があるかを推計すると、10歳以上で約2500万人となります。この数字から、痛みなどの症状がある実際の患者数は、約800万人と推定され、いかに多くの人がこの病気に悩まされているかがわかります。

ほとんどの場合多くの要因が関連して発症する

変形性膝関節症は、一次性と二次性に大きく分けることができます。一次性は、原因が特定できないもので、加齢や肥満など多くの要因によって発症すると考えられています。

先の調査では、変形性膝関節症の発症にかかわる要因として、肥満、立つ・歩く・坂を上る・重いものを持つといった動作、ビタミンKの摂取不足などが明らかになっています。

さらに興味深いのは、メタボリックシンドロームとの関連です。肥満とともに、高血糖、脂質異常、高血圧など、メタボリックシンドロームのリスクが高ければ高いほど、変形性膝関節症のリスクも高くなることが指摘されています。

一方、二次性というのは、なんらかの病気からおこっているものです。日本では、一次性の変形性膝関節症がその大部分を占めています。

変形性膝関節症の特徴

関節軟骨がすり減るのを避けることは難しく、放置しておくと、病気は確実に進行していきます。ただし、進行のスピードを落とすことは可能です。

三つの骨からなる膝関節

動きを支えるのは筋肉と靱帯

膝関節は、大腿骨(太ももの骨)、脛骨(すねの骨)、膝蓋骨(膝のお皿)で構成されています。

それぞれの骨が接触し合う部分の表面を覆っている、滑らかで弾力性に富んだ組織が関節軟骨です。さらに、大腿骨と脛骨の隙間には、内側と外側に一つずつ半月板がありますが、これも関節軟骨の一種です。


●膝関節の構造

膝関節は大腿骨、脛骨、膝蓋骨が組み合わさっている。骨同士が接している表面は関節軟骨に覆われ、大腿骨と脛骨の間には弾力性に富んだ半月板がある。骨同士は強固な靭帯で結ばれ、安定が保たれている。


これらの関節軟骨は、骨と骨とが直接ぶつかり合わないように、衝撃を吸収するクッションの役割を果たしていて、膝の動きを滑らかにしています。

膝関節を構成する骨をしっかりと固定し、安定して伸ばしたり曲げたりといった動作ができるように関節をコントロールしているのが筋肉と靱帯です。膝を伸ばすときに使う筋肉が大腿四頭筋、曲げるときに使う筋肉がハムストリングスです。靱帯は骨と骨をつなぐ強い組織で、筋肉と連動して膝の動きを支えています。前後の動きや膝を回す動きを支えるのが十字靱帯、左右の動きを支えるのが側副靭帯です。


●膝関節を支え、動かす筋肉

膝を動かす筋肉は主に大腿四頭筋とハムストリングス。膝を伸ばすときは大腿四頭筋が収縮してハムストリングスが緩み、膝を曲げるときには大腿四頭筋が緩んでハムストリングスが収縮する。膝を支えるには、特に大腿四頭筋の強化が大切。


これらの筋肉が衰えたり、靱帯が傷んだりすると、膝に負担がかかり、動きも不安定になります。

加齢とともに進む軟骨の損傷

滑膜の炎症が痛みの原因

膝関節は、関節包という袋で包まれ、その内側には滑膜という組織があります。滑膜を構成する滑膜細胞は、関節液の分泌と回収を行っています。関節液には、関節の動きをスムーズにする潤滑油としての役割に加えて、関節軟骨に水分や酸素、栄養分を運ぶという大きな役割があります。関節軟骨は、最大でも厚さ3〜4mmのスポンジのような組織で、主な成分はコラーゲンとプロテオグリカンです。成人の関節軟骨には血管もリンパ管も、神経もありません。そこで、関節軟骨の新陳代謝に一役買うのが関節液です。膝の曲げ伸ばしなど、膝をくり返し動かすことで、関節軟骨に圧力が加わると、関節包の中の関節液が関節軟骨に十分に浸透し、水分や酸素、栄養分が補給されます。


●関節液が関節軟骨に栄養分や水分を補給

膝の曲げ伸ばしにより、関節軟骨に圧力がかかったり緩められたりすることで、水分や酸素、栄養分が関節軟骨に行き渡る。


動かずにじっとしたままでは、関節液をうまく吸収できないので、関節軟骨を健康な状態に保つためには、適度な膝の運動が欠かせません。

しかし、膝の動きは1日に数千回ともいわれ、加齢とともに、徐々に膝への負担は増していき、関節軟骨がすり減っていくのは避けられません。クッションとしての働きが失われていくと骨どうしの摩擦が大きくなり、関節軟骨にも衝撃が加わって削り取られはじめます。削り取られた関節軟骨のかけらが滑膜を刺激し、炎症がおこります。すると、関節液が過剰に分泌されるようになります。関節液の中には、痛みを引きおこす物質が含まれているため、患者さんは痛みを感じるようになるのです。


●痛みが起こるしくみ

関節軟骨がすり減って破壊されたり、半月板が傷ついたりして、そのかけらが滑膜を刺激。滑膜が炎症を起こして、痛みを引き起こす物質を含む関節液を過剰に分泌し、痛みが起こる。


O脚あるいはX脚に変形

関節がこわばり、歩行も困難に

関節軟骨の新陳代謝は、非常にゆるやかです。そのため、関節軟骨が傷つくと修復が追いつかず、いったん始まってしまった損傷を止めることはできません。患者さんによってスピードはさまざまですが、放っておくと、徐々に痛みや変形といった症状は進んでいくことになります。

最初は、寝起きにこわばる、立ち上がる動作の始めにちょっとした違和感があるといった程度だったものが、徐々に腫れや痛みが現れるようになり、膝を完全に伸ばしきれない、あるいは曲げきれない状態になることもあります。階段の昇り降り、しゃがむ、正座をするといった動作が困難になる場合もあります。

関節軟骨の損傷は表面から奥のほうに、さらには、その下の骨にまで及びます。関節軟骨が完全になくなってしまうと、大腿骨と脛骨の骨どうしがぶつかり合い、骨がすり減るようになります。骨はすり減った分を補おうとしますが、以前とまったく同じ形での再生はできず、横にはみ出した形で増殖していきます。これを骨棘と呼びます。骨棘の増殖が進むと、膝はゴツゴツと節くれだち、O脚(またはX脚)の度合いも強くなっていきます。


●O脚

関節軟骨の内側に体重負担がかかるため、内側の関節軟骨が集中的にすり減る。その結果、ますますO脚の度合いが強くなる。

●X脚

膝関節の外側に体重負担が集中するため、関節の外側の関節軟骨のすり減り方が激しい。結果として、ますますX脚の度合いが強くなる。


日本人は一般にO脚の傾向があり、日本人の変形性膝関節症はO脚が多いのが特徴となっています。

変形が進むと痛みはさらに激しくなり、いずれは、動いていないとき、寝ているときにも痛みを感じ、歩行をはじめとする動作が不自由になり、日常生活に大きな支障が出てくるようになります。

このように、時間とともに確実に進行することが、変形性膝関節症の特徴です。ただし、膝への負担を軽くしたり(減量など)、適度な運動をして支える筋肉を強化したりすることで、進行のスピードを遅くすることは可能であり、それが、治療のうえでも重要なポイントとなります。


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