現代医学の弱点②

現代の食事では、糖質過多+必須アミノ酸不足+必須脂肪酸不足+ビタミン不足+ミネラル不足に陥ります。
しかし、現在の医学においては、「先進国の人は全員、栄養は満たされている」ことが前提になっています。つまり、栄養失調はないことになっています。

食事指導で行われるのは、「質」ではなく「量」を問題とした指導、つまりカロリー制限を中心としたもので、「質」を変えるという発想ではありません。とにかくカロリーをセーブする、つまり量を減らそうという指導がされています。

ここで、小学生でもわかる栄養の話をしましょう。

「タンパク質」「脂肪」「糖質(炭水化物)」「ビタミン」「ミネラル」が、5大栄養素といわれています。
タンパク質は、主に体の成分となり、一部が燃料となります。脂肪は、体の成分でもあり、燃料でもあります。タンパク質と脂肪は、体の成分として必須なものなので、必須アミノ酸、必須脂肪酸があります。糖質はほぼエネルギー源として使われるのみで、また、脂肪やタンパク質から生成することができますので、「必須糖質」というものはありません。

体内のタンパク質と脂肪は、常に、「作っては壊す」という代謝を行っています。これを「動的平衡」といいます。

例えば、粘膜上皮は2~3日で入れ替わり、皮膚は2週間で入れ替わります。そのため、タンパク質と脂肪は、常に十分量を補給する必要があります。足りなくなると代謝障害が起こり、体調が悪くなります。
なお、人間は動物なので、植物性タンパク質よりも動物性タンパク質の方が利用しやすくなっていますし、植物性脂肪よりも動物性脂肪の方が利用しやすくなっています。

ビタミンは代謝の補酵素として、またミネラルは、代謝の補因子および体の成分として使用されます。ビタミン、ミネラルが不足しても、代謝障害をきたし体調が悪くなります。

食事が糖質に偏ると、タンパク質、脂肪が不足して代謝障害をきたします。
また、糖質過多の食事では、糖質の代謝に大量のビタミン、ミネラルが使用されますので、ビタミン、ミネラル不足を招き、やはり代謝障害をきたします。

一般的な病院で指導されるカロリー制限は、「糖質 : タンパク質 : 脂肪」の比率を「6 : 2 : 2」に保ったまま、総量を減らすというものです。この比率ですと、当然、タンパク質不足、脂肪不足となります。絶対量が不足してしまうのです。ですから、カロリー制限は、辛くて長続きしないのは当たり前です。体が、「もっとタンパク質、脂肪が欲しい!」と悲鳴をあげるのです。

栄養の話は、こんなに単純で、小学生でも理解できる話です。
しかし、このことは、医学部では教えられていません。

医学教育では、こうした栄養学や食事指導については教えませんので、ほとんどの医師はこの質的な栄養失調の問題に気が付いていません。クリニックの医師はともかく、大学病院、国公立病院などの基幹病院に勤務している医師は、とくに気付いていないと思われます。

こうした構造が根本的に変わるのは難しいでしょう。
なぜなら、ほとんどの医師は、製薬メーカーの言いなりになっているからです。
そもそも、製薬メーカーの資金援助なしに、医学研究はできない構造になっています。ですから、新薬を持ちあげるような論文も出てくるのです。

なぜ、治せない治療、治せない研究、治せない論文だらけになってしまうのでしょうか。
それは、生物にとって最も大切な代謝である「エネルギー代謝」について言及しないからだと思います。
このエネルギー代謝が生命活動の根幹であり、この代謝に問題を抱えてしまうことが、多くの症状の原因なのです。
ですから、ここを目がけたアプローチをすることが、治せる医療ということになります。

「ATP」が十分にあると、遺伝子的に他の代謝の脆弱性があっても、十分カバーできます。
しかし、ATPが不足すれば、遺伝子的に他の代謝プロセスが完璧であっても、代謝が滞って病気になります。

つまり、エネルギー代謝が健康と病気を決めているということです。

しかし、生物学の大原則であるエネルギー代謝について、臨床医学の教科書にはまったく書かれておらず、それ以外の瑣末なことばかりが、くどくどと記載されています。

なぜかといえば、医師は「病気」を勉強しているのであって、「健康」について勉強しているのではないからです。
つまり医師は、患者さんに対して「どうすれば健康でいられるか」ということを指導するための教育は受けていない、ということです。

医師を信頼している患者さんは、医師の指示がなければ、生活習慣を変える気を起こさないことが多いでしょう。
患者さんは、「もしビタミンがそんなに重要で、自分に足りていないなら、医師からビタミン剤を飲むよう指示が出るはずだ」と思うからです。

ところが、栄養学は医学的学問分野ですらありません。
栄養学は医師の専門外なのです。

医学部では、栄養学をほとんど教えていません。
医師は栄養学を知らないのに、高血圧患者に減塩指導をしています。糖尿病患者にカロリー制限を指導しています。
その指導を、患者さんは真面目に聞いて、辛くても頑張って実行しようとしています。

一方、管理栄養士は大学で、「古典栄養学」を学んでいます。
経験には基づきますが、理論には基づかない、カロリーベースの「古典栄養学」に則って栄養指導をしているということになります。
やはり医師と同じく、自分が習ったことは100%正しいと信じていますので、自分の知識を否定されると怒り出してしまいます。

これから先の新しい医療、真に患者のためを考えた医療に必要なのは、理論に基づいた「分子栄養学」であると考えます。
分子栄養学とは、身体と栄養素との関係を、生化学的、分子生物学的に研究するもので、栄養素の不足が身体の不調を引き起こすと考えます。
多くの医師は分子栄養学を知りませんから、現在の飽食日本において、栄養障害がある、ということには考えが至りません。あるのは栄養過多だけだというのが多くの見解です。
しかし、実態は栄養失調、質的な栄養失調に陥っている人が大勢いるのです。