効率的な運動

二足歩行の最大の特徴が、エネルギーの効率性です。直立姿勢そのものもとても効率的であり、臥位の状態と比べエネルギーは7%しか多くない。歩行では、チンパンジーなどのナックル歩行は二足歩行に比べて約35%も多くエネルギーを必要とします。

ここで節約されたエネルギーは脳へ回され、体重量の約3%に過ぎない脳が、全身の3割近くのエネルギーを消費します。
ヒトは進化の過程で、身体のエネルギーを節約して脳を大きくしてきたといえるでしょう。

理想的な運動形態とは、効率的な動きであり、必要最低限のエネルギーで動けることです。ピラティスもこの機能的な動きを目指しており、闇雲にエネルギーを消費する運動とは一線を画します。関節は柔軟に、力の伝達はスムーズに、各部位が連鎖的に動き、目的とする運動を遂行します。ピラティスのエクササイズはすべて、ここに帰結するために存在するといえます。筋疲労によってやった気になるエクササイズではなく、体が楽に滑らかに動ける場所を探すエクササイズです。時には代謝を上げるために換気を促す方法も必要ですが、ピラティスを用いる場合は最終的にどこに行くべきかを理解しておく必要があります。

エクササイズの指導中には、クライアントがどういう状態で行っているかを観察することが重要となります。緊張した状態では、無意識に呼吸を止めていたり、表情が険しくなったり、肩が上がったりします。動きは固く、重い感じになります。効率的な運動のためには、呼吸を止めないこと、顔や肩の上部をリラックスさせること、動きが滑らかであることが必要です。

ピラティスは、身体を自転車のように乗りこなすための方法であり、様々な運動の基本です。ピラティスの基本原則は、あらゆるスポーツの基礎であり、ひいては末長く健康に過ごしていくための人間の動きの基本原則なのです。