低タンパク食が引き起こす障害

発展途上国の中には、想像もつかないほどタンパク質不足の食生活を送っている人たちがいます。

ガーナの女性は、日本の女性に比べて妊娠回数が多いために、母親は十分な授乳を行えず、仕方なしに早期に離乳食に移行します。それがまた極端な低タンパク食のために、カロリーに不足がないにもかかわらず様々な障害を引き起こします。この低タンパク食症状は「クワシオルコール」と呼ばれています。

クワシオルコールの症状は多面的です。まず、発育のよくないことが一目でわかります。髪の毛は細く、色がぬけて白くなった部分があります。皮膚は湿疹でかゆみを覚えるため、引っ掻いた跡が残り肌が荒れています。また、絶えずいらいらしています。

こうした症状が一つでも幼児に現れたらタンパク質不足を疑ってみたほうがいいでしょう。

タンパク質不足は結局のところアミノ酸不足ですから、分子生物学的に考察すれば、遺伝情報の発現ができないという結果に陥ります。そうなったらどこに障害が現れてもおかしくないわけですが、具体的にどんな形でそれが露呈するかをクワシオルコールは教えています。

クワシオルコールの多発する地帯は、主としてアフリカですが、他に南米諸国、インド、インドネシア、フィリピンなどにも患者がいるといいます。食糧事情的には、タピオカ・ヤマイモ・サツマイモなどを常食とする地方に多く、米・麦を常食とする地方には少ないといわれています。

クワシオルコールの症状を見ればタンパク質の生理的役割もよくわかります。

髪の毛の色素メラニンができない。からだの正常な発育ができない。浮腫が起きる。肝硬変が起きる。湿疹ができる。胃腸が悪くて習慣性の下痢になる。いらいらする。無感動である。筋肉が発達しない。運動神経が鈍い。行動が敏捷性を欠く…。

ここまで書けば皆さんもタンパク質に無関心ではいられないでしょう。