統合失調症について①

わたしたちは、自分自身を統一的な人格とみています。これが失われると、自分と他人、自分と世界との関係がわからなくなり、自分の思考や行為が他人の支配にゆだねられるようになります。幻覚や妄想につきまとわれ、現実世界への関心が薄れ、非現実の空想世界に生きるようになります。これが統合失調症の実体であるという意味の論文がかつて雑誌に載りました。その論文では、100人集まれば1人ぐらいは、一生のある時期に、あるいは長期間にわたって、このような統合失調を経験するといいます。

統合失調症患者は、自分が病気であることがわからず、自分のことばや行動が相手に通じないのがわかりません。そういう異常がありながら、脳内の糖や酸素の消費量、したがって血流量は、健常者と違わないのです。ただしこれは脳全体の話であって、患者では、血流量に偏りが発見されています。自己の統一という作業が、脳のいくつかの部分の談合によって成立するとすれば、血流量に局所的な多い少ないのあることは、談合がうまくいかないことを意味するでしょう。ブドウ糖の消費量が偏っていることも観察されています。

振り子の運動を目で追うとき、健常者なら、ぴたりとそれに追随することができますが、統合失調症患者は、目の運動が不連続になり、しかも、目標より先行します。

統合失調症を特徴づけている幻覚とか目玉のおかしな運動とかは、≪覚醒剤≫アンフェタミンの中毒症状によく似ています。そこで、アンフェタミンの病理作用を手掛かりとして、統合失調症の病理を解明しようとする試みがなされました。

アセチルコリン・ドーパミン・ノルアドレナリン・セロトニンなどの神経伝達物質を合成するニューロンは、大脳皮質から、脳幹や辺縁系にまで及んでいます。覚醒剤アンフェタミンは、ドーパミンの代謝をレベルアップして、ドーパミンの作用するニューロンの活性を高めるとされています。そしてまた、統合失調症の治療薬は、ドーパミンで働くニューロンの活性を低めると考えられています。結局、統合失調症では、ドーパミン作動性ニューロンの過敏状態があるようです。これを、≪ドーパミン仮説≫といいます。

ドーパミン仮説が正しいとすれば、統合失調症の症状は、覚醒剤によって悪化するはずですが、そうなる患者は、急性統合失調症では多いですが、慢性の場合には少数派であって、大部分は何事もありません。ドーパミン仮説は、難題を吹きかけられた形です。覚醒剤が快感・多幸感をよぶこと、統合失調症患者がニヤニヤ笑うことなどを、わたしたちは知っています。ドーパミンが快感をよぶホルモンであってみれば、ドーパミン仮説をむげにしりぞけるのも惜しいような気がします。

統合失調症の病理については、ドーパミン仮説より前に、アドレナリン仮説やセロトニン仮説が提唱されていますが、いずれもが十分な支持を得ていません。

イギリスのある病院はショッキングな報告をしています。手の施しようのない重症患者6名に、月見草オイルとペニシリンを投与したところ、悪化したケースは一例もなく、多くはかなりの改善が見られたのです。プロスタグランジンには三系統のものがあって、統合失調症ではその第一系統のものがほとんど欠落しています。月見草オイルの含むガンマリノレン酸はその材料であり、ペニシリンはプロスタグランジンE1をつくる代謝の促進剤です。

統合失調症の機序についての考え方は、次のとおりです。

統合失調症患者の脳では、ドーパミン、あるいはドーパミンを筆頭とするいくつかのアミン型ホルモンの過剰生産があるでしょう。一般に、このような神経伝達物質は、シナプス前膜から放出され、後膜のレセプター(受容体)と結合し、レセプタータンパクの孔を開かせる作用をもっています。この孔から、ナトリウムイオンが流入します。

もし、レセプタータンパクの分子数が、伝達物質を受け入れるのに不足であれば、そしてシナプスをガードするグリア細胞が完全でなければ、伝達物質は周囲に拡散するでしょう。そして、そのシナプスの近くの別のニューロンのシナプス後膜に流れていって、そのニューロンを興奮させる、というような事態を考えたらどうでしょうか。

このとき、互いに無関係なニューロンのあいだに連絡がつくわけですが、これを≪幻覚≫の実体とみたいのです。統合失調という現象は、シナプスによるニューロンの連絡という、本来、「関係」の成立の条件であったものがでたらめになるところからきたものではないか、と思ってみたいです。覚醒剤投与による症状の変化の問題の説明も、これによれは、特に困難ということはないでしょう。

神経伝達物質の分子数と、レセプタータンパクの分子数との関係は、相対的なものですから、何らかの原因でレセプタータンパクの減少があれば、統合失調の可能性がでてきます。そうなれば、レセプタータンパクに対する≪自己免疫≫ができても、統合失調症や幻覚が誘発されるのではないでしょうか。

じつは自己免疫病として知られる脳の病気がないではないです。それは≪シェーグレン症候群≫とよばれるもので認知症の一つのタイプです。その特徴は、涙腺・唾液腺・汗腺などの乾燥です。

ポーリングがビタミン療法に着目したきっかけは、カナダの精神科医が、統合失調症患者にナイアシンの大量投与をしているのを見たことでした。この一日量は17グラムです。統合失調症に対して、一日量30グラムというビタミンCの大量投与も好成績をあげています。

 

 


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