交感神経と副交感神経

〜逗子・葉山・鎌倉の整体&ピラティス【Reformer逗子院】のコラム〜

自律神経という言葉があります。
これは臓器の自動制御のための神経系です。
電気冷蔵庫の自動制御を例にとると、ここでは、温度の上昇過程と下降過程とが対立されています。
一般に、自動制御では、対立物が必要です。自律神経系では、交感神経と副交感神経とが対立します。対立がうまくいくためには、両者のバランスが必要です。自律神経は電気冷蔵庫と違って、スイッチで加減できないから、いったん失調すると、簡単には元に戻りません。

交感神経と副交感神経とは対立物に違いないですが、両者は対等ではありません。というのは、前者が主として無髄神経であるのに、後者は、有髄神経だからです。有髄神経は高等脊椎動物に特有なものであって、無髄神経よりも進化の度が高い。要するに、交感神経はのろまであり、副交感神経は機敏なのです。

交感神経の役割は、一口に言えば、全身の覚醒レベルを上げて戦闘体制をとることにあり、副交感神経の役割は、これを鎮静し調整することにあります。
具体的に言えば、交感神経は末梢血官を収縮させ、血液の大部分を脳・心臓・骨格筋に集中させます。このとき気管支は拡張して呼吸量を増やし、瞳孔は開き、立毛筋は収縮し、消化器の活動は止まってしまいます。このとき前記の標的器官にどんどん血液を送る必要から、血圧が上昇します。末梢血管の収縮も、高い血圧を要求することになります。

この機序を理解すれば、交感神経の緊張が長く続いた場合にどんなことが起きるか、およその見当はつくはずです。
まず、高血圧症があらわれるでしょう。動脈硬化が促進されるでしょう。心臓は血圧を高めるために肥大し、心筋は重い負担にあえぐでしょう。これで心臓がスムーズに動かなくなれば心不全です。心臓に栄養をおくる冠状動脈に障害が起きれば、酸素不足の状態が狭心症の形をとるでしょう。ここに血栓がつまれば、心筋の一部が壊死を起こして心筋梗塞ということになります。

交感神経の亢進は循環系だけに打撃を与えるのではありません。脳にも同様なことが起こります。血管が高い血圧に耐えられなければ、脳出血となります。血栓がつまれば脳軟化症です。腎臓の動脈が硬化すれば、腎不全から尿毒症に発展するかもしれません。

一方、副交感神経は交感神経とは逆です。瞳孔が小さくなって心臓が鎮静するかわりに、消化器・呼吸器が活動します。副交感神経の緊張が長く続くと、胃腸や上気道に障害が起きます。胃腸の障害は胃潰瘍・十二指腸潰瘍となり、あるいは常習便秘の形をとります。上気道の障害は喘息を引き起こします。

臓器はすべて自律神経の支配下にありますが、全身に分布する血管・汗腺・立毛筋などは、交感神経の支配下にあっても副交感神経の支配下にありません。副交感神経の守備範囲は個々の臓器の微調整であって、全身的な支配はもともと任務ではないのです。

神経を伝わる情報が信号電流であれば、その回路にもスイッチがなくてはなりません。しかし、ニューロンの回路には、スイッチのような機械的装置はなく、神経ホルモンと呼ばれる化学物質が回路を開閉します。神経ホルモンの主役は、交感神経ではノルアドレナリン、副交感神経ではアセチルコリンです。

神経ホルモンの分泌があれば、電気信号はシナプスをとびこえます。シナプスとは、スイッチの機能をもつ神経の接点であって、実際にはごく小さな間隙を残しています。神経ホルモンがあれば、信号電流はこのギャップを越えて伝達されます。

神経ホルモンの存在でスイッチオンになるとすると、これを消滅させない限りスイッチは切れないことになります。これではシナプスはスイッチの働きをしないでしょう。神経ホルモンを消滅させるためには、それを分解する酵素があればいい。副交感神経の場合、情報を受け取る側の細胞では、アセチルコリンを分解する酵素コリンエステラーゼを常に分泌しています。したがってアセチルコリンの分泌がなくなれば、一瞬にしてこれは消滅します。つまり、スイッチオフになります。この現象は、副交感神経の働きを敏速にしています。

一方、ノルアドレナリンはこれほど容易に分解されずに、全身に行き渡ります。そして、脳の中心部にある網様体に働いて、全身の覚醒レベルを引き上げるのです。ニコチンにはこの作用があります。もちろん、覚醒レベルの引き上げは、刺激閾値の引き下げを意味するでしょう。このとき、脳神経をも含めて、すべての神経は鋭敏になり、わずかな刺激で活動を開始します。

ノルアドレナリンは、アセチルコリンと違って、シナプスに分解装置がありません。ですから、交感神経のスイッチは、副交感神経のスイッチのようにさっと切れてはくれないわけです。無髄神経は情報伝達がのろまなところにもってきて、スイッチもにぶいときています。それがつまり、交感神経の特徴なのです。

そうかといって、ノルアドレナリンが永久に体内を巡るわけではありません。その一部は、神経末端のノルアドレナリン分泌顆粒に吸収されます。一部は副腎髄質でメチル基をくっつけられてアドレナリンになります。ですが、重要な反応は分泌顆粒のそばのミトコンドリアのもつノルアドレナリン酸化酵素マオによる酸化でしょう。活動家ノルアドレナリンはこれで失活します。睡眠に必要な覚醒レベルの低下は、マオによるのではないかと言われるのももっともです。

自律神経、すなわち自動制御神経のバランスに着目するとき、スイッチシステム、とりわけ副交感神経のスイッチシステムに一つの鍵のあることがわかります。
これはつまり、アセチルコリンとコリンエステラーゼが重要だということです。
アセチルコリンの原料コリンを最も多く含むのは卵黄です。
そして、コリンエステラーゼの原料SH基を最も多く含むのが卵白です。
卵を嫌うことから自律神経が失調するという可能性は、ゼロではありません。
この種の背景を無視して、交感神経亢進に対しては交感神経遮断剤が、副交感神経亢進に対しては副交感神経遮断剤が投与されます。

自律神経が失調するということは、自動制御の失調を意味します。この制御機構に対してストレッサーと呼ばれる外力が絶えず加わっています。ストレッサーの大きさが制御範囲を越えれば、自律神経は失調してストレスとなります。こういう現象に着目するとき、肉体を精神から切り離して考えることが非現実的だとわかるでしょう。

精神が病むのは、自律神経に限りません。中枢神経がやられると、いわゆる精神病になります。このとき医者にかかると、たいていは眠くなる薬を与えられます。このことは、問題の病気が覚醒レベルの高すぎることによると解釈された結果とみてよいでしょう。

そうかといって、精神病として総括される精神分裂・鬱病・躁病などの病理はまだ完全に解明されたわけではありません。薬を与えると症状が軽くなるという種類の経験の積み重ねによって、治療らしき作業が行われているのが現状でしょう。

精神病を対象とする薬剤を向精神薬といいます。ノルアドレナリンを分泌顆粒から追い出してマオで失活させれば、それがメチル化されて幻覚を起こす余地がなくなる一方、覚醒レベルが低下して、患者は眠くなるわけです。向精神薬の作用機序は、例えばこういったものです。

鬱病は鬱を症状とします。これは覚醒レベルの上昇によって救えるはずです。ノルアドレナリンを酸化失活させる酵素マオの作用を阻害すれば、目的は達せられます。この向精神薬はいわゆる覚醒剤ともなります。また、ノルアドレナリンが分泌顆粒に再吸収されることを阻害する物質も鬱病に対する向精神薬になります。

躁も鬱もノルアドレナリンの支配するところだとすると、この神経ホルモンの移動性が高まって、標的細胞への吸収が促進されれば躁病、分泌細胞の再吸収が促進されれば鬱病ということのようです。精神病の病理が神経ホルモンの失調で説明されることは、精神について考えるときのポイントでなければなりません。

精神と肉体とは統合体であって切り離しようがない。”病は気から”ということばもそんなところからでてきます。今日、気からの病は心因性の疾患として外因性のものと区別されるとはいえ、すべての病気に心因性要素のあることは否定できません。ということは心因を排除することができれば病状が軽減する場合の多いことを示唆しています。


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