良質タンパクの諸条件

栄養素としてタンパク質を見る場合、良質であるかどうかが問題になります。

良質糖質、良質脂質、などという言葉がないのに、「良質タンパク」という言葉があるのは、なぜでしょうか。ある人は、動物タンパクより植物タンパクのほうが優れている、などと言い出します。良質タンパクと植物タンパクとは、同義と考えてよいものでしょうか。

タンパク質というものの正体は、「ポリペプチド」と呼ばれる、アミノ酸を次々と繋いだ鎖状分子に他なりません。その鎖状分子が、良質であったり、良質でなかったりとは、どういうことなのでしょうか。

トウモロコシはかなりのタンパク質を含んでいます。人間ではまさかそんな実験はできませんが、ラットをトウモロコシだけで生活させると、まもなくそれは死んでしまいます。この場合、ラットにとって、トウモロコシのタンパク質は良質ではなかったのです。ここで、問題はそのタンパク質を構成するアミノ酸にあった、と考えなければなりません。

タンパク質をつくるアミノ酸は20種あります。グリシン、ロイシン、アラニン、チロシン、グルタミン酸などですが、トウモロコシのタンパク質の場合、リジンやトリプトファンが少ないのです。これがラットにとって致命的でした。この事情はわたしたち人間にも当てはまります。

ここにトランプがあったとしましょう。普通のトランプは53枚ひと組ですが、ここでのトランプは特別で、20枚ひと組です。このトランプには、グリシンとかロイシンとか、アミノ酸の名を書き込んでもよいです。すると、トウモロコシの場合、リジンとトリプトファンの札が抜けています。ラットは完全なひと組が欲しいのに、18枚のトランプでは何ともなりません。それで死んだのです。

人間だって、同じ運命にならざるを得ません。わたしたちも、20枚揃ったトランプが欲しいのです。結局、20枚揃ったトランプ、つまり、20種アミノ酸の揃ったタンパク質が、良質の名に値する、という結論になるのです。ですが、問題はそれほど単純ではありません。すべてのアミノ酸が等量に要求されるわけではないからです。

主食と呼ばれる米や小麦粉では、トランプの札は20枚揃っています。しかし、やはりリジンが足りません。そこで、かつてリジンの添加問題が起こったことは、よく知られています。

アミノ酸のトランプは、20種が一枚ずつあればそれでよいのではなく、何は何枚、何は何枚と、それぞれに枚数が違っているのです。そこで重要なのは、枚数の比です。

人間の場合のトランプ構成の一例を示しましょう。トリプトファンを1枚とすれば、スレオニンが2枚、リジンが3枚、ロイシン、イソロイシン合わせて7枚の割合です。この比でアミノ酸が欲しいのであって、どれかが余っても、どれかが不足しても困ります。もちろん、不足したアミノ酸がゼロでなければゲームはできないではないです。ただし、不足した札を基準にしますから、使わない札がでてきます。

トウモロコシについてアミノ酸組成を見ると、トリプトファンを1枚とすれば、スレオニンか29枚、リジンは0、ロイシン、イソロイシン合わせて171枚です。人間としてこれでは困ります。

卵白を調べてみると、トリプトファンを1枚とすれば、スレオニンが2.5枚、リジンが3枚、ロイシン、イソロイシン合わせて9枚です。これは、人間の要求にほぼぴったりする手の内なわけです。

卵白を良質タンパクとし、トウモロコシを非良質タンパクとする根拠は、ここにあるのです。

 

 


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