ローカーボ(低糖質食)時の脂肪源

ローカーボ時に大変なのが、十分な脂肪を摂取することです。

ローカーボで上手くいかない理由の大半は、

「十分な脂肪を摂れていない」

ことなのです。

ケトン体をエネルギーにするのがローカーボのポイントなのに、ケトン体の材料となる脂肪の摂取量が足りないと、糖新生が亢進して筋肉の分解が進んでしまうのです。

いったいなにから脂肪を摂取すれば良いのでしょうか。

アボカド

食事では一日にひとつの「アボカド」を食べるようにしてみましょう。

ひとつのアボカドに30g以上の脂肪が含まれます。脂肪酸は主にオレイン酸で、ビタミンEも多く、タンパク質も5gほど含まれます。

一日ひとつのアボカドを食べたところ、コレステロール値が改善されたという報告や、アボカドを食べることによってメタボリック・シンドロームのリスクが減少し、ダイエットの質が向上したという報告などもあります。

肉類

またタンパク源としてサーロインステーキや全卵、青魚を食べるようにすれば、同時に脂肪も摂取できます。

飽和脂肪酸の健康に与える悪影響を心配する人もいますが、2010年に発表された35万人を対象にしたメタアナリシスにおいて、飽和脂肪酸摂取量と脳心血管イべントの発生には関係がないことが明らかにされています。

また2015年のBMJでの論文も同様のことが示されていますが、ここでは飽和脂肪酸ではなくトランス脂肪酸の問題が示されています。

サーロインステーキだと和牛で100gあたり47.5gもの脂肪、輸入物で23.7gとのこと。

なおグラスフェッドビーフはオメガ3脂肪酸が多く、脂肪としては良いものなのですが、脂肪自体の量が少なく、グレインフェッドビーフの40%程度のようです。

また全卵だと一個で6~7gの脂肪となります。サーモンは100gあたり12.5g程度です。

肉類では意外に豚肉が優秀です。餌によっても変わりますが、豚肉はオレイン酸が多く、全体の半分ほどを占めます。意外に飽和脂肪酸は少ないのです。特にイベリコ豚には多くのオレイン酸が含まれ、これが美味しさの理由ともなっています。ちなみに牛肉にもオレイン酸が多いことは知っておくと良いでしょう。

ナッツ類

ナッツ類もぜひおすすめしたいところです。

マカダミアナッツは単価不飽和脂肪酸が多いのですが、飽和脂肪酸も少々多め。

クルミ(Walnuts)は不飽和脂肪酸が多く、特にaリノレン酸が多いというのは健康にとってもメリットとなります。

アーモンドやピーナッツ、ピスタチオはタンパク質も多く含まれ、植物ステロールも豊富です。

ナッツについて詳しく調べた調査によれば、次のような結果が出ています。

αリノレン酸を下げ、また心臓血管系の疾患を予防する。1回に30g程度のナッツを週に5回以上食べている人は、週1回しか食べていない人に比べてリスクが50%低下する。

慢性腎臓病による死亡率を低下させる。これは容量依存的で、多くナッツを食べている人ほど、死亡率の低下は大きかった。

食事にナッツを加えても(ナッツ分のカロリーが増加している)、体重は増加しなかった。ナッツをよく食べる人は体重が増えにくく、糖尿病にもなりにくい傾向にある。

「中程度の脂肪摂取&5回ナッツを食べる」群は、「低脂肪&ナッツを食べない群」よりも体重を多く減らすことができた。

通常の食事に500kcalを追加した場合、8週間で普通なら3.6kg増加するはずのところが、ナッツでカロリーを増やした場合は体重増加が1kgに抑えられた。

特にクルミに多く含まれるαリノレン酸とエラグ酸には抗炎症作用がある。また日本で行われた研究では、クルミに含まれるポリフェノールが脂肪の代謝を促進(ベータ酸)したり、メラニンの生成を抑制して美白作用をもたらしたりすることがわかっている。

このように良いことづくめのナッツですが、一つ注意したいのは「アフラトキシン」です。

これはナッツによく発生するカビ毒のことで、最強の発がん物質の一つです。

もちろん規制はされているのですが、明らかにカビているようなものは避けたほうがいいでしょう。国産品ならばアフラトキシンはまず発生しないので大丈夫です。

そしてもう一つ。ピーナッツにはタンパク質が多いと書きましたが、実はピーナッツはナッツではありません。詳しくはお調べください。

健康への効果についても、ナッツは効果があったがピーナッツだとダメだったという調査もあります。

MCTオイル

そしてMCTオイルも使いたいところです。

MCTとは中鎖脂肪酸のことです。中鎖というのは炭素の数が中くらいということで、脂肪酸に含まれる炭素の数が8個のカプリル酸や10個のカプリン酸(オクタン酸)のことを、MCT と呼びます。

なお炭素数が12個のラウリン酸はココナッツオイルに多く含まれ、このラウリン酸も中鎖脂肪に分類することがあります。

「カルニチンを必要とするか否か」で言えば、ラウリン酸はカルニチンを必要としません。つまりこの意味ではココナッツオイルは中鎖脂肪に分類されるのです。

ココナッツオイルの約半分がラウリン酸で、10%程度がカプリル酸とカプリン酸、残りは長鎖脂肪酸です。

MCTのように炭素数が少ないと消化吸収が早く、またミトコンドリアに運ばれるときにカルニチンを必要としないため、エネルギー化も早くなります。MCTは長鎖脂肪酸(ルミチン酸)に比べて4倍速く酸化され、ケトン体生成量は 10 倍にもなります。

また消化吸収が早いことからDIT反応も活発であり、食後6時間までのDIT総和値はMCTのほうが長鎖脂肪酸よりも優位に多いことが分かっています。

なおMCTオイルを使うことによって、オリーブオイル群よりも体重を減らすことができ(平均1.7kg)という報告もあります。計算上は一日に45kcalの消費カロリー増加となりました。食事内容は低糖質ダイエットではなく、普通のダイエット食で、油の内容を変えただけというものです。

これも日本で行われた研究ですが、一日10gMCT12週間に渡って摂取したところ、BMI23以上の男女の体重と体脂肪率が顕著に低下したという結果が出ています。

癌やアルツハイマーの治療・予防のためには一日60gものMCTオイルを使うことがあります。ただこれだけの量を使うとお腹が緩くなることもありますので、低糖質食の場合は一日30g程度を目安にすると良いでしょう。

一回に5gを使って大丈夫だったら、徐々に増やして一回10gにし、それを一日3回、プロテインに混ぜたりサラダにかけたりして摂取します。5gでもダメな場合は、少量のレシチン (ティースプーン半分程度でOK)に溶かして乳化させると良いかもしれません。

MCTオイルを飲むと調子が悪くなるという人は、仙台勝山館の製品を一度試してみてください。他の安価な MCTオイルに比べ、ココナッツを原料とし、ケトン体になりやすいカプリル酸とカプリン酸のみとなっており、製造方法も優秀なようです。

なおMCTオイルを凍らせてラカントやステビア(天然の甘味料)をふりかけて食べると美味しいそうです。

αリノレン酸は

このようにサーロインステーキやアボカド、ナッツ、青魚、卵、MCTオイルなどを食べれば十分な脂肪を自然に摂取できます。加熱調理にはオリーブオイルを主に使うといいでしょう。

ここで気になるのが、アマニ油やシソ油、エゴマ油などのオメガ3はどうなのかということです。

シソ油やエゴマ油、他にアマニ油などは「αリノレン酸」が主体となります。これは体内で EPADHAに変換されていきます。ここまでは有名ですが、もう少し流れを詳しく追ってみましょう。

αリノレン酸は06デサチュラーゼによってステアリドン酸になります。これがエイコサテトラエン酸になり、さらに05デサチュラーゼによってエイコサペンタエン酸(EPA)になります。EPAはドコサペンタエン酸になり、さらに04デサチュラーゼによってドコサヘキサエン酸(DHA)になります。

このようにαリノレン酸がEPADHAになるためには、多くの酵素が必要とされます。

脂肪からつくられるプロスタグランジンというホルモン様物質は、体内の様々な働きを微調整しており、それの材料が脂肪であって、「善玉プロスタグランジン」は EPA からつくられ、「悪玉プロスタグランジン」はアラキドン酸からつくられ、リノール酸からは善玉と悪玉の両方がつくられるということになります。

ここでポイントとなるのがリノール酸です。リノール酸がプロスタグランジンをつくるためには、06デサチュラーゼや05デサチュラーゼが必要となるのです。これはαリノレン酸がEPADHAになるときに使われるのと同じ酵素です。

ということは、リノール酸とαリノレン酸がある場合、この両方で「酵素の取り合い」が起こってしまうわけです。特に日本人の食生活ではリノール酸が多いため、酵素が不足する可能性が高いと思われます。

そのため、αリノレン酸からEPADHAへの変換はますます起こりにくくなります。

国際脂肪酸・脂質研究学会(ISSFAL)は「αリノレン酸からDHAへの変換はごくわずか」だとしています。

また日本での論文では変換率は10~15%だとしていますが、食事で飽和脂肪が多いときは EPAへの変換率が6%DHAへの変換率が3.8%であり、不飽和脂肪が多いと変換率は40~50%低下するという報告もあります。

2000年以降の研究ではαリノレン酸からDHAへの変換率は0.1%程度とするものも多いのですが、脳が要求するのは一日に2.4~3.8mgなので、脳へのDHA供給はαリノレン酸からの変換でも何とか賄えるとする報告もあります。

最近発表されたマウスでの研究では、EPADHAは乳がんの抑制効果があるが、αリノレン酸の場合は同じ効果(腫瘍サイズが60~70%縮小)を得るためには、ずっと多くの量が必要だったとされています。

ただしEPADHAは心臓血管系疾患の予防に有用だとされていますが、ベジタリアンは魚を食べません。そして血中DHAレベルも低くなっています。しかしクルミやアマニなどからαリノレン酸を摂取しており、動脈硬化は少なく、心臓血管系疾患にもなりにくいとされています。

実際にαリノレン酸は心臓血管系疾患のリスクを減らすことが分かっており、またEPA DHAは鬱を減らす効果が少ないのに対し、αリノレン酸には抗鬱作用があるかもしれないという調査研究もあります。

こうしてみると、EPADHAにない何らかの作用がαリノレン酸にはあるのかもしれません。

シソ油とエゴマ油、アマニ油を比較すると、αリノレン酸の含有量は大差ありません。

ただしシソ油とエゴマ油にはルテオリンというフラボノイドが含まれ、抗炎症作用や神経保護作用が期待できます。

特に加齢に関係する炎症物質である「NURP3 インフラマソーム」を減少させ、また炎症性サイトカインであるIL-18IL-1Bタンパクの発現を阻害し、マクロファージの極性化を促進するようです。

これらのメリットから考えると、食事やサプリメントで十分にEPADHAを摂取している場合は、寝る前のプロテインにシソ油やエゴマ油を混ぜることにより、良い結果が得られる可能性がありそうです。

ただしEPADHAと同様、非常に酸化しやすい油ですので保存には気を使い(冷暗所)、小さいサイズの商品を買って早めに使い切るようにしたほうがいいでしょう。

ココナッツオイルは悪なのか

2018年に「ココナッツオイルは純粋に毒である」と話した講演がありました。

その意見をまとめると、「ココナッツオイルはほとんどが飽和脂肪酸である。飽和脂肪酸はLDLコレステロールを増やす。そして動脈硬化を促進する。ココナッツオイルの健康への効果を示す研究はほとんど存在しない。まだラードのほうがマシだ」となります。

さてこの真偽は?

18か国に住む135335名を対象にした追跡調査で、2017年にランセットに発表された報告では、

「高炭水化物の食事は総死亡率を高める。脂肪摂取量が多いほど総死亡リスクは低くなる。飽和脂肪酸の多い食事は脳卒中のリスクが少なくなる。総脂肪摂取量や飽和あるいは不飽和脂肪酸の量は心臓血管系疾患による死亡率と関連しない」

としています。

これはかなり衝撃的な結果で、ランセットという有名誌に掲載されたこともあり、多くの議論を呼びました。飽和脂肪酸が悪玉だというこれまでの常識がくつがえされてしまったのです。

ちなみにココナッツオイルを使ったヒト対象の研究も、実は結構存在します。

健康な成人58名を対象に、一日100gのココナッツオイルとピーナッツオイルを摂取させた研究では、ココナッツオイル摂取群でHDLLDLの両方の増加が起こり、ピーナッツオイル摂取群ではHDLの低下が起こりました。

ピーナッツオイルは45%がオレイン酸で32gがリノール酸ですので、ほとんど不飽和脂肪酸です。

ここで大事なのはココナッツオイル群でジホモガンマリノレン酸が増えていることです。

ジホモガンマリノレン酸は1系統のプロスタグランジンの材料になり、抗炎症作用や血液の流れを良くする作用、抗動脈硬化作用を持っています。

本来ならリノール酸の多いピーナッツオイルのほうがジホモガンマリノレン酸を増やしそうなのですが、ココナッツオイルの方がそうなったというのは実に面白い現象です。

またインドでの研究では、冠状動脈疾患を持っている患者200名を対象に、2年間に渡って総カロリーの15%をココナッツオイルとヒマワリオイルのどちらかで摂取させました。

その結果、両者の間に身体サイズや生化学的な差は起こらず、心臓血管系機能やイベント発生率にも差はありませんでした。ただしヒマワリオイルはココナッツオイルに比べて酸化ストレスが大きくなっています。

健康によいとされているオリーブオイルとの比較はどうでしょうか。

50歳から75歳の成人男女を対象に、一日に50gのバターかオリーブオイル、ココナッツオイルを摂取し、4週間後の経過をみた研究があります。

その結果、バター群は他の二者に比べてLDLが増加し、ココナッツオイルは他の二者に比べてHDLが増加していました。

また75名の肥満女性を対象に8週間に渡ってダイエット食と運動を行わせ、ココナッツオイルグループとヒマワリオイルグループ、チアオイルグループ、大豆オイルグループとに分けて比較した研究があります。

その結果、ココナッツオイルグループがもっとも体重とBMI が減少し、ウエスト周径やconicity index(腹部肥満の指標)も減少していました。

さらにココナッツオイルグループはもっとも血糖値パラメータや糖化ヘモグロビンが減っており、チアオイルグループはもっとも総コレステロールとLDL、中性脂肪が減少しHDLが増加していました。

なお、この研究では29のオイルを食事の30分前に摂取し、一日トータルで6gの摂取。

量としてはかなり少なめです。

こうしてみると、少なくともココナッツオイルにHDLの増加は期待できそうです。

健康面においても問題はないでしょう。

さらに運動や低糖質食と組み合わせることによって血糖コントロールや体組成改善にも役立つと思われます。


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