アルギニンとシトルリン、オルニチン①

EAA 、グルタミンに次いで、重要なアミノ酸が「アルギニン」です。

アルギニンは非必須アミノ酸なのですが、子供のうちは体内で合成できないため、子供にとっては必須アミノ酸ということになります。

WHO(世界保健機関)によれば、一般の成人男性のアルギニン必要量は、一日に6〜7グラムとのこと。しかし日本人の食生活では、この6割くらいしか満たすことができていません。

アルギニンを多く含む食物はナッツ類やマメ類、シラス干しなどですが、これらはアルギニン以外の余計なもの(脂肪、塩分など)も含んでしまいますし、普段の食事で食べるようなものばかりでもありません。できればアルギニンはサプリメントで補うようにするのが賢いと言えそうです。

アルギニンには多くの作用があるため、まずは簡単に紹介していきましょう。

◉アルギニンの働き

アルギニンは身体の中で「一酸化窒素(NO)」というものを出します。この一酸化窒素により、次のような効果があらわれてくれます。

1. 血管を広げ、血液循環を良くする
アルギニンによって発生するNOには血管を拡張する作用があり、血液の流れを良くする作用があります。このため、動脈硬化を防止したり、EDの治療に効果を発揮したりしています。また冷え性やしもやけなどにも有効です。

2. 骨を強くする
特に閉経期の女性は女性ホルモンの分泌が低下して骨が弱くなるのですが、女性ホルモンはNOの作用を介して骨を強くするとされています。またアルギニンは後述のとおり、成長ホルモンを分泌させる作用もあるため、この方向からも骨を強化するように働きます。

3. 免疫力を上げる
NOには免疫細胞(NK細胞、LAK細胞、マクロファージなど)の活性を高め、免疫細胞が細菌やガンなどを退治する作用を助けます。

4. 筋肉細胞を増やす
筋肉細胞の周りには衛星細胞(サテライト細胞)と呼ばれる細胞があり、これは将来的に筋肉細胞に変わっていきます。NOは衛星細胞を活性化する作用があり、新しい筋肉を増やすために大きな役割を果たします。
他にもNOの作用により、胃腸の調子を良くしたり、肝臓を保護したり、学習力や記憶力を高める効果が期待できます。

これだけでも大変な効果ですが、一酸化窒素に関連しない部分でも、さらに次のような効果があります。

5. 成長ホルモンを出す

6. グリコーゲンを早く溜めるように働き、疲労を回復させる

7. アンモニアを除去して腎臓の働きを助ける

8. 糖尿病、また糖尿病による様々な疾患の予防

9. 痛みを抑える「キョートルフィン」という物質の材料となり、鎮痛作用を発揮する

10.脂肪を燃やす酵素の働きを高め、運動中に脂肪が燃えやすくなる

11.クレアチンの材料となる

重要なポイントを解説していきます。

まずNOですが、これは体内において活性酸素としても働き、逆に活性酸素を除去するようにも働きます。しかし46名の肥満患者を被験者として行われた研究によれば、一日3gのアルギニン摂取を8週間継続することにより、抗酸化能が改善することが示されています。
アルギニンはリンパ球の働きを高めてT細胞を増やし、免疫を増強してくれることも知られています。
またアルギニンはグルタミンと同様、コラーゲンの前駆体であるヒドロキシプロリンの合成に必要となり、アルギニンの摂取により創傷の治癒を促進することが分かっています。これはアルギニンの成長ホルモン分泌作用も関係していると思われます。

さらにヒスチジンと同時にアルギニンを摂取することで窒素保持作用が認められたという報告や、成長期を終えたブタに1.0%のアルギニンを餌に混ぜて60日間与えたところ、胴体部の筋肉量が5.5%増え、脂肪量が11%減ったという報告から考えて、アルギニンの筋タンパク合成効果も期待できそうです。

研究者によれば、これらの作用はAMPKの活性化とPPAR-γの活性化によるものだとされていますが、他にインスリン作用の強化やcGMP の筋細胞における活性化やアンドロゲンレセプターの活性化も関与していると思われます。

またアルギニンは脂肪燃焼にも関与します。
肥満ラットを用いて行われた研究では、アルギニンの摂取により、白色脂肪細胞の増加が抑えられ、筋肉量が増え、褐色脂肪組織も増えたという結果が出ています。

12週間のアルギニン摂取により、コントロール群は98%増えた白色脂肪が、アルギニン摂取群では 35%の増加に抑えられました。またコントロール群に比べ、アルギニン摂取群はヒラメ筋の筋肉量が13%、長趾伸筋の筋肉量が11%増え、褐色脂肪組織が34%も増えています。
この研究では1.5%の塩酸アルギニン溶液を餌に混ぜて飲ませていますが、これはヒトに直すと一日2500kcalの摂取に対し、9.4gのアルギニン摂取に相当します。

なおコペンハーゲンでの研究ではアルギニンの摂取量が高い子供は、身長の伸びが大きいことが明らかになっています。これは成長ホルモンの増加によるものでしょう。

またアルギニンは口腔ケアにも役立ちます
虫歯や歯周病を防ぐため、多くの歯磨きや洗口剤(ガーグル)が市販されています。しかし口腔内にはバイオフィルムと呼ばれる細菌のコロニーが形成されていて、その中にいる歯周病菌は、殺菌剤に対する抵抗性を備えているのです。
そのバイオフィルムを壊してくれる作用が、アルギニンにあるかもしれません。アルギニンは口腔内において様々な種類のバクテリアの代謝やシグナル伝達を改変し、バクテリアの凝集を防ぐ作用があるのです。またバイオフィルムの量自体を小さくします。

アルギニンのNO産生による血管拡張・血行促進は、高血圧などを改善するだけでなく、酸素や栄養素の運搬をスムーズにするため、持久力の向上にも役立ちます。

また12名の男性テコンドー選手を対象にした研究や、22名の男女ハンドボール選手を対象にした研究で、BCAAとアルギニンを同時に摂取したところ、非摂取群と比較して顕著にスプリントパフォーマンスの改善や、中枢性疲労が軽減されたという報告もあります。


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